砂時計のくびれた場所

競馬の血統について語るブログ

サンデークロスのあれこれ トラスト配合雑論

トラストの配合を掘り下げていたら長くなったので別記事へ。

サンデーサイレンスクロスに関しては例が少なすぎてなんとも言えない。

・父母父サンデー、母父父サンデー、でのクロス

・父母が「サンデーサイレンスノーザンテースト」の配合形

・父が社台系列の名牝系出身

・非ND系の異系(ニアリー)クロスを持つ。(KingmamboMr. Prospector)≒Majestic Princeなど)

・Sun Again絡みの血統を持つ

・母母が「非SSかつ非ND」の異系である

これらがノットフォーマルとの共通点かな。最後の4分の1異系は最重要。

NDとSSはNatalma≒Cosmahで緊張してしまうので、ノットフォーマルのように母が非NDであるほうが望ましい。だが母父がSS✕NDの名血統であっても問題はなく、それは緊張の継続として扱える。いずれにしても4分の1の非SS非ND異系は必須だ。

その4分の1異系が重要なのは、例えばオルフェーヴルドリームジャーニーメジロマックイーンを見てもそうであるし、あとエイシンブルズアイのSiphonも良い例である。主流血統ではないけれども、その主流血統の脇を固めるような血統構成・・・それもG1級の血統を使っているとなお良い。

ただしこの場合は母親が「2分の1異系」を取るわけだから「競争能力がG1級、遺伝力もリーディングサイアー級」でなければ母自体が競走馬として大成することはない。サンデーサイレンスの異常さはそこにあるわけだねぇ・・・。メジロマックイーンやSiphonなんかがリーディングを取るなんて想像もできない!

母ちゃんグローリサンディはダート千二~千八を主戦場とした馬で、エーデルワイス賞3着。全弟に新潟ジャンプS勝ち馬のユウタービスケットがあり、もう一頭の全弟ビービーラッシュも障害2勝の馬。さらにもう一頭の全弟ダイヤサンディは地方8勝馬全日本2歳優駿を5着・・・だが2秒1という大差の5着。

決して優れた牝系ではないのだけれども、相応に優れた配合を取っているらしい。恐るべきは生産者の執念と言うべきで、さり気ないクロスを重ねて重賞馬を出したのだからすごい話。

エイシンサンディは未出走馬だがセイクリムズンミツアキサイレンスマルヨフェニックスなどの砂の強豪を輩出した種牡馬で、他にエイシンテンダーなどの産駒もある。砂の名短距離馬セイクリムズンムーティエ5✕4かつプリメロ7✕8なのでグローリサンディはやるべきことをやっているんだな。

このムーティエプリメロはSSにもNDにも関係しない「異系」であるから、母グローリサンディがその緊張で走っているのであれば、SSとNDは緩和の状態にあると言える。トラストはそこを緊張へ持って行った・・・緊張と緩和のリズムが素晴らしい!の状態。

スクリーンヒーロー産駒としての話になるが。マジックゴデイス≒メジロアサマが発生しているので小技も利いた配合である。Never Bendと異なりWar Admiralをもクロスしているのでパワーに偏り過ぎる。War Admiral≒War Relicを合計4本も通しているとなればダート馬まっしぐら!

ここでサンデーサイレンスクロスの共通点をもう一つ。

・ダート配合下におけるクロスであること

ノットフォーマルの父ヴァーミリアンはダート馬であり、産駒の傾向も芝6勝の砂41勝で大きな差がある。(ちなみに芝馬はノーザンテーストクロスとサンデークロスの二択。オルフェーヴルを輩出した強靭なノーザンテーストも、ヴァーミリアンの下においては芝へ誘導する靭やかな要素。だが芝での勝ち上がりが百発百中というわけではない。)

トラストも同様にダート配合と言えて、それを反発するかの如きサンデーサイレンスクロス!それでなんとかしてしまった感がある。もう少し遠ざかることでなんとかなると思うのだが・・・そうかフサイチコンコルドがダービーを勝つ前はこんな感じだったのだな。

ただ、フサイチコンコルドは父母共に5代アウトであり、本馬はND3✕3とHail to Reason4✕5の相似配合である・・・ということだけ。アウトブリーダー同士の強い相似配合がこの結果をもたらしたのだ。Royal Chager≒Nasrullahなどのニアリークロス、Pharos=Fairwayなどの全きょうだいクロスも発生しない5代アウトは素晴らしい。これに比べるとトラストはごちゃごちゃしている。

3✕3という強烈なクロスはそれほどの緩和がなければ成功しないのだろう。成功=G1制覇と思えば高いハードルであるが、トラストやノットフォーマルのような配合で重賞を勝っている事実がある。それにエピファネイアがが種牡馬入りして4✕3、あるいは4✕4の配合が可能となった。

昨年のダービー馬が母父サンデーのドゥラメンテであり、今年のダービー馬はディープインパクト産駒だ。けれど5年後にはサンデーサイレンスクロスのダービー馬が誕生しているのかもしれない。

トラストやノットフォーマルは未知の配合に挑んだ開拓者の成果である。いきなりダービー馬や三冠馬が誕生することも・・・あ、いや、うん。ノーザンテーストクロスが一般的になったのはドリームジャーニーが最初だよなぁ・・・。全弟が三冠馬になっちゃったのも割りとすぐ。こういうこともあるんだわ。

それに比べたら随分とのんびりした進行だ。初年度からフジキセキを出したあの最強っぷりを思うと物足りないところがあるくらい。けれど世の中の流行り廃りがそうなってしまった以上は仕方がない。

競走馬は常に進歩するもんであるし、そういった中で血は厳選されるものである。

ただグローバルに血統が広がりすぎたかもしれない。Northern Dancerは欧州と北米による合作であるが、それを共通とした流行らせてしまった。それでもフランケルという名馬は産まれたが、それもドイツの異系があってこそ。フランケルからフランケルは産まれない・・・とは言えないが父ガリレオほど容易い道ではないだろう。

Nasrullahも同様の問題を抱えていたはずだが、対して注目されずに試練をこえた。My BabuyやRoyal Chager、あと忘れちゃならないMahmoudなんかの相似な血統があるのだが、Nasrullahが緊張がどうという問題に直面した事実はない。不思議っ!

これらの血統はあくまでも牝系と経過を同じくする程度である。だからその後の発展には多少の違いがある。Turn-toとMy Babuの関係性の様に同じ道を行くこともあるが、代を経ることにお互いの距離は遠くなる。

その末に「Nasrullah≒Royal Chager」というニアリークロスがある。これって結構すごいことだよね。

またNasrullahNever BendBold Rulerといった独特な後継を擁し、また別の方向ではNantallah≒Nashuaの相似な血統をも輩出した。何がどうあってもNasrullahは方向性の異なる(ニアリー)クロスが発生することになる。

対してNorthern Dancerは方向性の定まった後継が多い。Night Shift≒ノーザンテーストStorm BirdNijinsky、Sadler's Wells≒Nureyev、LyphardDanzig。となると、比較すべきはNasrullahではなくNearcoだったと今更後悔してしまう。

サンデークロスにノーザンテーストが必ずあるのは、サンデー✕ノーザンテーストが「Lady Angelaの緊張→Almahmoudの緊張」とリズムが良いからだろう。その後にNDそのものの緊張が起こるから、サンデーサイレンスのAlmahmoud(ないしCosmah)を除いた要素が緩和される。

ヴァーミリアンスクリーンヒーローHail to Reasonのクロスを持つし、その経由が「Hail to Reasonの権化Roberto」と「欧州スタミナの化身Fairy Bridge」なのは当然と言うべき。ディーマジェスティなどはRoberto≒Fairy Bridgeと表記できそうな切れ方をする。

Wishing Wellは明確な緊張を施すのが難しい。Mr. ProspectorDamascusNorthern DancerやSwapsやBlushing Groomや・・・サンデーサイレンスが何でも許容する理由はここにあるのだろうな。おそらく作用としてはGlorious Song牝系馬が近いと思うが。その点においてもグラスワンダーって便利だな。(Soaringまで共通)

クロスがどういう風に成功を収めてきたのか・・・そういうことを勉強したい。

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