菊花賞展望
・強靭な馬を
菊花賞がスロー瞬発になった歴史はなく、それならやっぱりパワー&スタミナの切れない馬を買いたいところ。ここに駒を進めてくる馬にステイヤーは珍しいし、それが勝った例はない。マンハッタンカフェとてステイヤーではなく中長距離馬だろう。
秋華賞とは正反対にマイル適性を伺わせる馬は絶対に買えない。トーセンラーみたいな例外はあるにせよ、本命とするならばゴールドシップの様な化け物中長距離場を選びたい。ディーマジェスティにはその素養があると見るが。
近親に短距離を持つキタサンブラックが前年の覇者である。過去にもそういった例はあるわけだが、こういった馬を発掘するのは実に面倒くさくて楽しいものだ。けれどレース前に発掘できた覚えはない。レース後に全てが繋がって「あー」となる。
・近い代の短距離血統
メリットは一つ。立ち回りに難しさがないこと。切れ味で勝負できないレースであるから立ち回りも重要な要素だ。ステマ配合の2頭や脅威のペースで横ノリが導いた08年、京都を知り抜いた武豊が逃げ残った06年などを除いて、ほとんどが前残りの決着になっている。(06年は幸四郎-横ノリの仲良し決着)
ただこの類の配合はバランスが難しい。ビッグウィークやトーホウジャッカルの様に綺羅星が如くその才能を瞬かせる例も少なくなく、彼らは3歳秋に突然現れて、その後は何もなく競馬村を去っていく旅人のような存在だ。確かにあった彼らの才能は更なる本格化や精神の疲弊によって消えていった。
早熟型のステイヤーなら無理もあるだろう。菊花賞という舞台はこういう馬の救済も兼ねている。一人の競馬ファンとしては、そんな馬を跳ね除ける最強の中長距離馬を望むけれど。
・早熟型のステイヤー
穴馬は大抵これである。古馬になってからはイマイチだけど、あのとき君は輝いていた!のタイプだ。「菊花賞◯着なら」と年明けに人気するも微妙に人気を裏切るタイプだ。買うタイミングをドンピシャで構えなければならない。
神戸新聞杯で実績のあるケースが多いが、全部が全部飛んで来るわけではないのが難しい。しかも血統に不備があるケースも多く、2代母レガシーオブストレングスが大駆けすることもある。どうして短距離の名門から菊花賞2着馬が産まれるのか。こういう例外があるからレッドファルクスの素質を疑ってしまうんだ!俺のせいじゃない!
ていうか単勝万馬券で臨んだ神戸新聞杯を惨敗した馬が本番で微妙に人気を上げているのはなんだろうね。128倍が37倍に爆上げしてるよ。母父リアルシャダイを疑わない競馬ファン、それに応えるフローテーション、ディスイズ菊花賞。
・万全の中長距離馬
中長距離馬が勝った例がほとんどだ。ゴールドシップもエピファネイアもキタサンブラックも中長距離馬。けれど京都の長丁場で争った方が勝ち味が強い中長距離馬でもある。エピファネイアも春天に出ていれば面白かった。面白いだけだったかもしれないけど。「エピファネイアが単騎で逃げてるぞ・・・!」ザワザワ
中長距離馬の定義は自分でもよく分かっていないが、とりあえず秋天で勝ち味のないタイプが中長距離馬だろう。カンパニーが勝つ秋天では差せないけれど、ウオッカの勝つジャパンカップでは差せる・・・という様な。
このカテゴリの馬は大抵の場合、不遇である。中長距離戦は大抵の場合でスローであるし、かといって脚の使いやすい中距離戦のスローでは切れが足りない。春天で久々に仕事をしてやろうかと腕まくりをしたところでピンクの帽子を被った騎手が歩き寄ってくる。
だが全てが噛み合ったときには目が醒めるような凄絶な勝ち方をする。エピファネイアのジャパンカップ、ゴールドシップの宝塚記念、オルフェーヴルの有馬記念・・・。全てを覆す様な勝ち方をする。
なのでスローのダービーや速い皐月賞で地味な負け方をした馬が狙い所だ。この時に注意したいのは「この馬なりに頑張ったんじゃない」という春の先入観を持たないこと。
「ブラックタイドねぇ。まぁ先行策から粘っぽく走ったらリアルスティールしのげるんじゃないの。」
→スプリングS1着。
「前走は上手く行ったけどリアルスティールのがやっぱり強いからね。」
→皐月賞3着
「母父バクシンオーならダービーはきついんじゃない?」
→ダービー14着
「やっぱりそうだよね。本格化したこの秋じゃマイラーによってんじゃね?」
→セントライト記念1着
「セントライト記念はスローだったからね。本番はそう上手く行かないよ。」
→菊花賞1着
「なんだこいつ。」
この「なんだこいつ」をレース前に抱くこと。そのために矛盾を見出すこと。これが大事。キタサンブラックの血統に似合わぬ端正な馬体を放っておくべきではなかったんだ・・・。
・中距離の変態
ヒモによく絡む中距離馬、上のリアルスティールもそうであるが、例に暇がない。立ち回りを要するので追走や折り合いに問題がなければなんとかなるらしい。ただこの場合はG1や重賞を幾つも勝つ馬でなければ難しい様子。かなりの素質馬だ。
その中で異彩を放つのがエアシャカール。血統だけを見れば立ち回り身上の中距離馬であるが、実際には皐月賞と菊花賞の二冠を得たきかん坊の追い込み馬だ。この馬が唯一、綺麗に折り合って、綺麗に馬群を捌いたのが菊花賞。
アイドリームドアドリームはBold Rulerの不思議を感じさせる繁殖で・・・と書き始めると長い。フランス(Herbager)と英愛(Umidwar)とイタリア(Ribot)のスタミナと、フランス(Teddy、Tourbillon)と英愛(Tudor Minstrel)とイタリア(Nearco)のスピードがBold Rulerを通じて表現されている、とまとめる。
いずれにしても馬券としての旨味がなく、しかも人気を裏切ることも多い。来てしまったら事故と思うしかないのだが、この時期に中距離馬と中長距離馬の区別はつかない。エアシャカールにしても、引退までのデータがあり、きょうだいが多く走り、甥っ子や姪っ子が走り、そういった積み重ねがあるからこそ「こいつ中距離馬だな!」と言えるのだ。多くて10戦そこそこの馬に対しては断定は出来ない。
しかもワンアンドオンリーの様に中長距離馬が人気を裏切ることも多いのだ。どちらであろうと関係ないか。
・本命馬たち
やはり前哨戦上位は捨てがたい。サトノダイヤモンドは断定できる数少ない中距離馬だ。Haloクロスらしく競馬が達者で、それだけにダービーと皐月賞の負けに疑問符がつく。じっくりと構えて疑問を解いていきたい。
ディーマジェスティは競走馬としての質が完全に上位であろうと見込む中長距離馬。この馬で菊花賞を勝てないならディープ産駒はいつ菊花賞を勝てるのか、そう考えるくらいには強い馬だ。ダービーまで三冠馬じゃないかと思っていたくらいで、セントライト記念で一層思いを強くした。「ダービーがスローじゃなかったら」
心を不安定にさせるのはエアスピネル。アイドリームドアドリーム牝系馬であるが、ノーザンテーストの入るキンカメサンデーだ。中距離馬だろう・・・という気持ちが拭えない。しかも前走は分かりやすい公開調教レースで、それでもあの脚を使ったのだから非凡である。Bold Rulerの中距離馬がこのスローロンスパで流れ込んでくるのだから格が違う。
・神戸新聞杯
6着ナムラシングン以下は大きく離された決着で、ラップを見る限りでは先行勢に大きな負荷がかかった様子がないのに前が大きく崩れた。むしろ後方潰しの後傾ロンスパである。潰れる先行勢が拙いのか、それとも上位陣が強すぎるのか。
神戸新聞杯は力関係の出やすいレースであり、ダービー上位の取りこぼしが考えられないくらいには格差社会である。その通りになったのだから何の不思議はないが、この結果から神戸新聞杯の先行勢を本番で全消ししてもいいものやら。
かといって消さない道理がない。明らか過ぎるくらいに立派な前哨戦だもの。こんなに前哨戦前哨戦した神戸新聞杯はなかなかない。血統的にもったいなく思う気持ちがそうさせるのだろうか。母父ラムタラのヴィクトワールピサ産駒、ジョルジュサンクは狙い目だと考えていたからなぁ。
・その他
脅威を感じるのはハズレ無しのステイゴールド産駒シュペルミエール。ステゴ✕フレンチデピュティはニックスで、クロフネでも無問題。菊花賞の登竜門である兵庫特別を快勝しての臨戦だ。ただ、クロフネは実に重苦しい切れ方をする血統であるし、そのくせステイヤーを出す甲斐性を持たない。つまり中長距離向きの中距離馬を輩出する血統と言える。
更に不安を煽るのはコスモジャーベ。零細牧場から引っ張ってきたビッグレッドファーム所有馬で、「ソングオブウインド✕モルフェデスペクタ✕ダンスインザダーク」という字面には恐怖しか覚えない。血統表を軽く掘ってみても好配合ではないが。
あとはウムブルフ。母ウミラージはドイツのスタミナが強い繁殖で、Lyphardクロスの母がドイツスタミナのディープ産駒・・・という点はビッシュと同じ。2代母はイタリアのG1も勝ったウンガロの全妹で、母父Monsunはドイツのリーディングサイアー。WikipediaによるとMonsunはウインドインハーヘアに敗れたレースを最後に引退している。運命の出会いだね。
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