砂時計のくびれた場所

競馬の血統について語るブログ

秋華賞回顧

展開は「ド」がつくスローだったと言っても過言ではなく、そこから対して速くなりもせずに3角へ侵入。本命パールコードは好位に位置取っての競馬。前を見ながら外へ開いて川田渾身のダンスオールナイト。ジリジリと伸びてカイザーバルを交わした。

「よっしゃ!馬券は外れたけど本命馬は仕事したじゃん!」

そこに一気の脚で福永のヴィブロスが突っ込んで、入線。ジュエラーも内からジリジリ伸びて4着まで。ビッシュは差しきれないままにトントンの競馬。

ビッシュはこれ、公式では一応34秒1で上がっているわけのだから脚は使っているのだよね。でも前半のツケを取り戻すために向こう正面でまくったツケが出たような負け方で、母に強いスピードを持たない弱さが出た。ガチの中距離馬としてはきちんと走ったと思う。

最後は差されるHaloが、福永の後出しでスローの秋華賞を差し切った・・・という結末。後ろから差したくせに末脚の繰り出しは遅く、格が違うから直線までじんわりと構えられた。

軽量馬の勝ち味が薄いと言ってもスローなら話は別だよな。まくったりハイペースであったりするなら平均並みの馬格があったほうが有利だけど、一瞬だけビュッと末脚を使うなら軽くても問題はないし、むしろソッチのほうが弾けやすいだろう。

カイザーバルはダンスパートナーの全妹ダンスインザムードの産駒で、同父のダンスパートナー産駒がフェデラリストである。4分の3Tom Foolなのでここでも弾けようはあったし、平坦の分だけパールコードには劣ってしまったけれど中山金杯愛知杯で更に上昇するはず。

あとパールコードとカイザーバルの4角での進路が芸術的で見応えがある。

四位のおっさんが膨れ気味にNijinskyTom Foolをダラリと導いたのを見ながら、川田がスマートに2頭分外へ開いてラインをクロスする。脚を持続させる様に動いた四位のおっさんと、スピードを乗せてここから脚を使おうという川田の騎乗。これほど目に見える形で名手の4角さばきが比較できるレースも珍しい!

その後ろでパールコードを見ながら追い出しを待つヴィブロスの存在があるのも面白い。

田原軍団には胸元の広さを指摘され、その原因として膝の硬さが挙げられていた若き福永祐一。それは今もなお改善されることなく、四位のオッサンと比較しても馬と胸の間は広く見える。川田将雅は論外だけども、ミルコもやっぱり胸のあたりは狭いよな。

四位のおっさんも随分指摘したはずであろうし、それでも治らなかった悪癖。それでも二世騎手は結果を残し続けて競馬村の中に役割を見出す。その役割の中でディープの素質馬に乗り続け、人気馬を勝たせ続けてリーディングの地位を射止めたのだ。

ディープ時代の中で、勝ち味の強いディープ産駒に乗り続けた福永祐一だからこそ出来ることもある。それがこの後出しの瞬発なのだろうし、確かにこの瞬発戦をこの形で勝てるのは彼だけだろう。そして、俺にはこの形でしかヴィブロスの勝ちは見いだせない。ラップを見る限りではウチパクさんの先行じゃ勝ち味が薄い。

ヴィルシーナと同じように素直で真面目な可愛い馬だ。Haloクロスらしい立ち回り身上の馬で、何か一つ強烈な武器を持つわけではない。枠の都合で決め手を封じられ合った今年の秋華賞においては、これ以上ない最高の素質だったとも言える。こればかりは何にも阻害されることはない。

華麗に立ち回って華麗に差し切った。展開がG1でなければ馬の素質で勝てるのが福永祐一で、こういった1600万下の展開ならやりたい放題だったかもしれない。

本物のG1ならこんな展開で前が薄いなんてことはありえない。ごった返した好位であーでもないこーでもないとあがく姿が福永祐一であり、その姿が実に楽しい。「これが競馬だ!G1だ!」と。彼が好位からすんなりと弾けてしまうのであれば、それはもう条件戦なのだ。

誰もがG1という肩書に騙されて必死に競馬をした。ジュエラーをマークするものもいただろうし、あわよくばの差しに構えたものもある。「テンの速い秋華賞なら差して味がある」と大抵の騎手が考えたに違いない。けれど実際はスローであったし、松山も鞍下に自信を持てず控えてしまう。

どこかで見た光景であった。逃げたい松山を制して岩田がスローの逃げを打つ・・・レッツゴードンキ桜花賞がまさにそれ。これはG1の格と一緒にペースを落とす名コンビとして覚えておこう。

松山はミッキーアイルみたいな逃げも打つのに、何の拍子か知らないが、こういった消極的な騎乗も目立つんだよな。スローの番手を狙うのには遅すぎる判断なのに。

ファンからしたら府中牝馬の横ノリや普段のバッシュがやるように、スローに落としたい馬を交わしさって単騎~大逃げに持ち込むくらいの気概があったほうが印象が良い。あんなタイミングで二番手に控えてもまるで旨味がない。本当にG1勝ったことあんのかってくらいの騎乗。

岩田が既定路線のスローに落としているのに、その場でそれに乗っかってしまうのでは話にならない。それで岩田を交わせたことがあるのか、と尋ねたい。

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