砂時計のくびれた場所

競馬の血統について語るブログ

スロー専門のディープ娘 有馬記念予想

ジャパンカップ2着、宝塚記念2着、というものだけを見れば「あぁ典型的なディープ牝馬か」という解釈に落ち着く。しかし阪神大賞典2着がある。ゴールドシップとの差は性別の差に等しく、牝馬の身であることを考えれば勝ちに等しい。

元ダービーレコードホルダーであるディープとキンカメの配合だから、あまり速さに集中したものではない。それでもあの末脚を持つのは、Mountain Flowerに対して二面的な対応をしているからだろう。

ディープインパクトは大雑把に言えばサンデーサイレンスウインドインハーヘアの相似配合である。Haloに対してAlzaoを配し、Wishing Wellに対してBurghclereを配した。明確に相似と言えないのは血統そのものの相似性が薄い上に、ウインドインハーヘアがFair Trialという新要素を組み込んでいるからで、またこれが競争&繁殖能力の生命線。Mountain Flower弄りはGulf Stream≒AuroraやFoxlaw=Aloeに留まる

キングカメハメハはBlack Ray、Belle Mere=Beau Pere、La France≒Omaha=Flares、Foxlhunter、などをクロスする。これはGraustarkMill ReefMr. Prospector、Nureyev、Nijinskyらを巻き込んだ大々的なクロス群であり、それに付随して様々な血統をサンデーサイレンス全体に脈絡させている。実績通りに強烈なニックス配合。

この2頭が噛み合うだけでもかなりの好配合なのだが、それをすっきりと補佐するのがフェアリードールという名繁殖。Burghclere≒Mixed MarriageやAurora≒Gulf Stream≒Heliopolis、Khaledの継続とは別にHyperion×Beau Pereの観点からSwaps≒Flower Bowl、牝系クロスとAlibhai継続でYour Host≒Flower Bowl、と強烈なニアリークロスが勢揃いだ。

Flower Bowl絡みのニアリーを思えば前受けベターな感じもするが、AimeeとMixed Marriageを介したTudor Minstrelクロスが複雑。これはアンビシャスと同じ仕組み。ディープの牡馬と牝馬で気性の表れ方に違いはあるだろうが、二頭とも馬群から抜けてこない点を同じくする。

そして二頭ともスロー専門である。アンビシャスは前受けして5頭のG1馬を大阪杯で退けたが、これは2番手から33秒4の上がりで勝ったG2らしからぬスロー戦。あとも大体上がりの速さですっ飛ばしたレースばかりだ。

デニムアンドルビーは特にひどい。追い込むにしてもスローが好みであって、アンビシャスの中山記念の様に流れた展開を追い込むことが出来ない。その分だけ切れは上なのだが限界値の見極めがやたらと難しい。前走の金鯱賞の様に速い上がりだけが目立つこともしばしばだ。(2着のジャパンカップは2番上がりに対してコンマ3秒差、同じく2着の宝塚記念ではコンマ6秒差。)

これがTudor Minstrelらしい・・・というわけではなく。

これは早い段階で短距離化したHyperion系であるがために、現代には半端なステイヤーぶりを伝えてしまったのだろう。短距離血統だけあって行きたがるところはあるが、スローのときにゆったりと走られる強さがある。いや、スローでゆったりと走らなきゃ優位性を保てないと言うべきだな。スローからジリジリと火を入れる馬に対して、すぐに燃える気性とピッチ走法で上回るのがベストな展開。

ディサイファ日経賞で脚を使いきれなかった様にスローになりすぎると馬の闘争心を戻すのに時間がかかる。ストライド走法であればその傾向に一層拍車がかかるため、追い出しを待てるピッチに軍配が上がりがちだ。あくまでも好位から展開できるジェンティルドンナのような存在だからこその旨味だけど。

それを後手から繰り出さなきゃならないアンビシャスとデニムアンドルビーはすごい弱点を得ている。なんたって火付がいいからスローでゲートを出しても落ち着かせるのが難しい。でもそれをしなきゃ大物を喰うことが出来ない。かといってスローにならなかったら沈没は確定する。宝塚記念のアンビシャスは馬群が嫌いってのもあるだろうが馬場に対してペースが速すぎた。前3F目にペースが落ちなかったのも痛い。

有馬記念に出走してくるデニムアンドルビーだが、チャンスはどうも巡ってこないくさい。

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