砂時計のくびれた場所

競馬の血統について語るブログ

何故ブラックタイド産駒が高速で~(略) その2

さて、キタサンブラックの配合における最大のポイントはどこでありましょうや。

それは「4分の1Blue Larkspurクロス、4分の3非Blue Larkspur」のブラックタイドに対して、更に非Blue Larkspurのシュガーハートを重ねたことだ。このあたりの頑強をとことん無視してSir Ivor的な靭やかさをそのまんまに据え置いたこと。

この仕組みがあるからこそPrincequilloを弄らずとも靭やかさを阻害することはなかった。そもそもサクラバクシンオーとは対Blue Larkspurにおける名種牡馬であり、ブラックタイド×サクラバクシンオーはその手の靭やかさをおおよそ同じくしていると言える。血統として伝える靭やかは同一なのだ。

サクラバクシンオー産駒の活躍馬は母父にBlue Larkspurクロスの血統を組み込むか、あるいは母がクロスされているかの二択。超がつく例外がグランプリボスであり、これは母父サンデーで母自身は「4分の1Blue Larkspurクロス、4分の3非Blue Larkspur」の配合。

これが成立したのはグランプリボスから見て4代母にあたるFathers Pillowというヘンテコな血のためと見える。北米とドイツ系フランス血統の不思議な組み合わせが秀逸で、それとサンデー、サクラバクシンオーでつぎ込まれたRoman的パワーの増幅が素晴らしい。(Craig an EranはBuchanと4分3が同血で、その産駒Admiral Drakeは母がPlucky Liege。Sir Gallahad×BuchanのRomanと近い組み合わせ。)

これを教科書とすればRoman的なパワーでブラックタイドサクラバクシンオーは繋がっており、グランプリボスと同様に「8分の1Halo」の靭やかさを抽出するに至ったのではないかと。

して、この場合のPrincequilloはどういった働きをするのか。

PrincequilloとBlue Larkspurが結びつくことは少ないが、現代においてはその反発のために有用である。その仲立ちにはSir Gallahad=Bull Dog、La TroienneなどのTeddyの名血が担当することが多いが、Nasrullah系においてはBold Rulerがダントツトップ。Law SocietyとかSeattle Slewとか、特にSecretariatは対Blue Larkspurで食っている様なところがある。

現代日本においてはPrincequilloとBlue Larkspurが働いてりゃ一流みたいな部分はあって、殆どの血統はこの2血統に脈絡してしまう。そしてこのバランスが綺麗にハマるとディープインパクトみたいな変態が産まれるわけで、この産駒はPrincequillo的なものが非情に多くあったがサトノダイヤモンドが誕生したことで二面性を証明した。

キタサンブラックはこの二面性に対してとことん中庸的。その中庸を以ってリアルスティールを打倒し続けたし、サトノダイヤモンド春天と有馬でトントン。中庸にしては随分と化物的であるが・・・この類の馬が展開利を貪って突き抜けてしまうと手が出せない。どのタイミングで追いかけても若干の有利を手にして直線へ向いてしまう。

これを破るには前提の有利を覆してしまうか、一点集中の化物適性によってねじ伏せてしまうか。有馬のサトノダイヤモンド産経大阪杯のアンビシャスにはそれがあったと言えるし、あと皐月賞ドゥラメンテリアルスティールもそう。

脱線した。

Blue LarkspurとPrincequilloBold Rulerによる仲立ちが多いという話であった。これは2血統がGallinuleの増幅によって成功したことが理由であり、この血統は必ずPretty Pollyへ集約される。何故ならばNorthern Dancerが現代競馬における大きな幹であるからだ。ましてやノーザンテースト持ちともなれば当然だ。

だがWilliam the Thirdが関連するとなるとやや話は怪しい。これはほとんどの場合でGallinuleを伴って伝わる血統なのである。Friar's Daughter然り、Nashua然り、Trevieres然り。そもそもDonatelloがそうなのである。

例外はCourt Martialみたいなパターン。GallinuleはIsonomy×HermitなのでCylleneの母Arcadiaで代用が効く。それをPolymelus経由とすればHamptonも一緒にやってくるので、Polymelus×William the Thirdの配合においてはその母系にBlair Atholがあれば格好がつく。またBona VistaがあるのでThormanby≒Scottish Chiefの作用も働けば完璧。古き良き英国血統という風情に落ち着くのだ。

Discoveryの全体においてそのあたりの処理はこなしているため心配は無用。非GallinuleにしてGallinule的な要素を積み込んだ配合であり、これによってNasrullahとPompeyを迎えるなら問題はない。

このように現代に残る血統は対Gallinuleにおいて完璧な処理を施されていることが多く、北米で発達した非Gallinuleの血統はおかしなことをしていることが多い。ニックス血統を集めすぎて英国での発達が不可能なレベルに追い込まれた血統の多いこと。

それだけに対Pretty Pollyスタミナへ無警戒な状態である。増幅というよりも急激な引き寄せにあってボロボロになった血統も多いのだろう。それでも残った血統をインブリードして煮詰めていったのが現代に残る北米血統であり、そこら辺の吟味は不必要とも言える。

サンデーサイレンスジャッジアンジェルーチもそういった血統であるから対Pretty Pollyに関しては不足はなく、特にサンデーはHyperion×Swynfordの観点から問題が見られない。というよりも、サンデーサイレンスの方が秀でているとも言える。

これはSardanapale×Ladasからの発展形。HyperionとSickle=Pharamondの母SeleneはPilgrimageのクロスを持つが、これの父The PalmerがRosicrucianと全兄弟の間柄。Selene自身はThe Palmer≒Rosicrucian4×5*5の配合である。この兄弟はHampton×Blair Atholに対してニックスを持つので、HyperionとSon-in-Lawとのニックスの根拠はここに見られる。

これがPretty Pollyに結びつくのはPilgrimageの代表産駒Canterbury Pilgrimの代表産駒にSwynfordがあるためで、これはIsonomy×Hermitの配合であるからGallinuleとの相性が良い。それはSwynfordの代表産駒であるBlandfordから見てもそうであるし、またHyperion×Swynfordの配合においてLady Angelaが輩出されていることから見てもそうである。もちろんBlandfordもPretty Pollyとよく絡む。

数あるGallinule産駒においてPretty Pollyが素晴らしいのはThormanby≒Scottish Chiefの絡みからBend Orと強く絡み、その発展形としてBona Vistaがあり、Bona VistaNearcoThe Tetrarchの2血統から父系とスピードの二面を支配したためである。

Bend Orの話に脱線すると、この血統の面白いところはBend Orとして発達した血統であるのに実際はタドカスターであることである。この2頭を輩出したかの牧場は慧眼であった様子であり、Doncasterの観点からこの2血統は秀逸であった。

おそらく分かりやすいニックスと名繁殖を据えていたのはBend Orの方であって、タドカスターはどちらかというと隠れニックス的なものを突いた鬼っ子。

タドカスターは英国的な全きょうだいクロスをThormanbyに、血統表上においては、組み込まれている。だが実際はTouchstoneとの牝系クロスを軸としたMacaroniとのニックスが強烈で、またそれはPantaloonを共通としてやはりThormanbyと脈絡した。タドカスターは実際のBend OrへMacaroniとのニックスによって吸い込まれたような形だ。

そしてIsonomy×Hermitと合流を果たしてCylleneが、その絡みを活かして更にCylleneはGallinule的な成長を進めていった。Nearcoの代までGallinuleを組み込まれずに発展したのはHamptonという逃げ道が未だ残っていたためか。

Hamptonというか、Quiverと言うべきかもしれない。QuiverはHamptonを取り込んで完全な非St. Simon繁殖Maid Marianを輩出し、それはCylleneと脈絡して大種牡馬Polymelusを輩出するに至った。しかし一方でSt. Simon産駒のLa Flecheという名牝も輩出している。

日本語読みでラフレッシュ。St. Simonの代表産駒にも数えられる牝馬であり、母としてはJohn o'Gauntを輩出した。これはSwynfordの父として著名。また母系を紡いだ先にBeau Pereがあり、サンデーサイレンスがある。これがBlandfordなんかと硬く結びつき、将来的にPretty Pollyを深く迎え入れたのは当然とも言えるか。

続く

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