砂時計のくびれた場所

競馬の血統について語るブログ

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ディープ×A.P. Indyは基本的に弾けない。これはWeekend SupriseがSecretariat≒Sir Gaylord1×3という強い相似を持つためで、母父Secretariat種牡馬としてA.P. Indyはスタミナ的な柔らかさを強く伝える種牡馬として出た。

これを支えるためにBold Rulerの継続をしながらもMr. Prospector×Nijinskyというパワー&回転の血統を加えたのがPulpitであるが、この2血統はともにBuckpasserをニックスとする血統だった。なので考えの基点はBuckpasserへ移っている。

その産駒Essence of Dubaiは母EpitomeがNot Afraid×Hail to Reason×MahmoudなのでHaloの肝を抑えた配合と言える。Buckpasser×Sir GaylordのLassie Dear、それとSeattle Slewの父Bold Reasoning、これらと同じようにニアリー判定がギリギリ可能なラインである。

なのでディープ×Essence of DubaiはHaloとBold Rulerの中間をさまようタイプの斬れを作りやすい。

重要なのはTurn-to-Hail to Reasonを除いてRomanを弄る血統がなく、またWeekend Surpriseの段階でSomethingroyalの処理が完遂されていることだ。ディープ的な外回り斬れが表現しづらい状況にある。「SomethingroyalとRoman突進の融合」を肝とするディープインパクトの鋭い斬れを血統的に切り離しているのである。

この配合形から出るのは「Princequilloを土台としたパワー突進ディープ」「Princequilloを土台としたスタミナ緩々ディープ」の二択であろう。アルアインは前者である。

Great Majestyという血統がPrincequilloを欲するタイプの血統なのだから、そりゃEssence of Dubaiをつけたくもなる。

ここで視点を変えて、注目したい点はみんな大好きCherokee Roseである。IntentとEssence of Dubaiはこの牝系出身である。そしてCherokee Rose自身は米英の両面で繁栄した超繁殖Woodbineの一家だ。

平凡な配合においてNashua≒NanntallahはLadas絡みの活路しかないわけだが、Cherokee Roseという名血統が加わることでRobert Le Dibableというもう一つの方向性を見つけられる。つまりそれはDonatelloと同じであるから結局Ladasへ合流するのが落ちなのだが・・・血統の順序を変えられるのは大きい。Cherokke Roseを軸とした場合、父に強力なHyperion軸の英愛血統を迎えられるのである。

・非Cherokee Roseの場合

1,Nashua≒Nantallahを支えるためにLadas絡み(Son-in-Lawなど)を取り入れる

2,累代においてその傾向は継続されるため異系を得られない

3,Nashua≒Nantallahを取り入れても異系としての英愛がないためパワーばかり目立つ(早熟傾向)

・Cherokee Roseの場合

1,Woodbineのスタミナを根に持つためNasrullahを相手にしてもスピード化しづらい

2,Cherokee Roseは北米の名繁殖なのでクロスしやすい(La Troienneの様に)

3,WoodbineはRibotにも絡むのでHis Majesty=Graustarkを有効に扱える

4,後々に大きな英愛を取り入れてもNashua≒Nantallah×HM=Graによる好相性が光る

嵐猫の名繁殖が中距離で躍動するのもCherokee Roseさんのおかげ。Storm CatStorm Birdに何をしても怒らないし、それに絡んだスタミナを尽く許容するもんね。

もちろんSpecialの様にHyperionを早い段階でNantallahへ組み込むなら問題はないわけだが、それをやって成功した血統はこれ以外にない。ドバイマジェスティのAmbernash(Nashua×Heliopolis)も「Nasrullah×Hyperion」として使ったならば二束三文にすぎないだろう。ちょいとしたアクセント程度で丁度よい。

この場合のアクセントというのは、作用の分断を前提とした在り方だ。そのまんま使うには役に立たないが、実際問題として後に影響を及ぼすくらいのニックスなのだから組み合わせとして使う分には良い。「Nasrullah×Princequillo」とて、そういった風に扱われることがほとんどだ。(ボールドラッドとか)

アクセントなのだから、異系として扱うのがベターである。そのためNecaras MissにおいてはPilateクロスが主軸とされ、次世代Mistic Majestyの代ではFlower Bowlの「Alibhai×Mahmoud」へ吸収されている。Ribotという異系を扱うために表へ叩き出された格好であり、Kingmamboなどを見ての通りに「Nasrullah×Hyperion」とはこういった情けない扱いを受けることがしばしば。

もちろん表舞台へ上がることもあるわけだが、Specialクラスじゃないと・・・。

してCherokee Roseに話を戻すが、これがDynamoの代まで行くとまくりの馬に出なければならないレベルとなる。ディーマジェスティオルフェーヴルドリームジャーニーがそれ。Bold Irishの枝葉でもLongfordであればまくるかと。

これはMenowという切り口を得ているからで、Longfordは既にFighting Foxを取り入れているからMenow×Sir Gallahad=Bull DogでTom Foolと同じ配合形。Dynamoは間違いなく近い代でSir Gallahad=Bull Dogを取り入れるので、やはりTom Foolとの脈絡を果たす。

そしてNasrullahを高確率で導入するのでHaloとの脈絡もある。

これらのHaloニアリー血統に共通するのはNorthern Dancerと同族であるHaloへのアウトブリードであり、米血スピードとしてのHaloを注視したニアリークロスである。NDとの脈絡による部分を消そうという動きだ。

これはサンデーサイレンスの持つHaloとHyperion&Flembetteの絡みをも引き剥がすわけなので、サンデー固有の中距離適性を削ぐ結果をもたらす。こういう事をディープにするとウインドインハーヘアの頑強がよく表現されて「米血パワー&英愛スタミナ」の融合が起こる。ブラックタイドっぽい頑強が表現されるとも。

ただ種牡馬としてのブラックタイドは頑強を伝えるがために靭やかさをよく表現するし、種牡馬として鋭くも靭やかなスピードを供給するディープインパクトだからこそこの類の硬さを表現し得る。だからやたらめったら靭やかでスタミナ的なブラックタイドディープインパクトの名血を破るという変則的な事態が起こるし、それを全てなぎ倒す変則的な「サンデーサイレンス×トニービン」が続々と現れるのである。ジャスタウェイとかドゥラメンテとか。

それらを相手取ってなお全てをかっさらっていったのがノーザンテーストクロスの三冠馬ってのが実に面白い。ディープはトニービンノーザンテーストと大きなニックスも持たずにリーディングをひた走っているのだから凄いもんだわ。

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