砂時計のくびれた場所

競馬の血統について語るブログ

ハクサンルドルフあれこれ

東京新聞杯へ出走予定のハクサンルドルフは配合が良い馬で、ハクサンムーンアルキメデス級ではなくとも重賞を勝ち負けする器。


この配合で最も褒めるべきはOver Allの配合だ。「4分の3Nasrullah、4分の1Raise a Native」のG1勝ちスプリンターであるが、アドマイヤムーンへの道を思えばWar AdmiralによるMan o 'WarとSweepを一本化に着目したい。

そしてこのWar AdmiralはHempenとPokerの2本を引いている。それぞれNasrullahと密接に関係している点が共通し、かたや「Nasrullah×Hyperion」かたや「Nasrullah×Princequillo」としている点も重要だ。

その上でMiss Hullhouseは「Nasrullah×Princequillo×La Troienne×Tom Fool」でもある。Henpenの父Indian Hempは「Hyperion×Sarita(Pretty Polly)」で、Mr. ProspectorからはNative Dancerを引いている。よってOver Allは「Northern DancerNasrullah×Princequillo×La Troienne×Tom Fool」に近い仕組みだ。



近い仕組みってだけの話で、「Polish Precedent≒Over Allだ!」なんてことを言うつもりはない。そしてニアリークロスの可能性を否定するつもりもない。ニアリークロスというのは周辺血統の働きによって「あり」「なし」に別れるものだ。

だから先生の「ニアリークロス探偵団」にもちょいと懐疑的だ。ニックスを適切に説明するための手段としてニアリークロスはあるわけで、ニアリークロスが効果を及ぼすわけではない。

キングカメハメハ×ジェイドロバリーのニックスを説明するにKingmamboジェイドロバリーの手段を使うという難しさはある。けれどこの順番を間違ったらニアリークロスではなくなってしまうのだわ。

先生がそれを間違うことはない。Halo≒Red Godダイワメジャー×Blushing Groomにしか適用しない方なのだから。しかし「ニアリークロス探偵団」という催しは血統マニアをやや狂わせてしまうところがある。

そしてニアリークロス本もそうなのではないかな。血統初心者がこれに触れたら入り口を誤ってしまうかもしれない。塩梅が難しそうな企画だ。

(そのあたりが難しくて別ブログの血統記事が遅れている)




してOver Allの次世代スルーオールが相似配合を取るわけだが、Poker3×4をぶちかましてくるわけよね。「Nasrullah×Princequillo×La Troienne」の組み合わせであるPokerを濃くインブリードしてきた。

次世代キングスミールがPrincequilloとLa Troienneに触れずにHail to Reason4×5。緊張の継続としてNative Dancer5×5。ついでにNashua≒Nantallahもやってしまう。相似配合から緊張と緩和&継続の相似配合という怪しいリズム。

そしてハクサンルドルフが「4分の4Native Dancer」「4分の3HtR、4分の1エンドスウィープ」「父母間ND・Mr.Pクロス」「4分の3Nearctic、4分の1スルーオール」と。


難所が二つある。

Fair Trialの主導権をTheatricalが握っていること。
「4分の1Poker3×4」に対する4分の3の在り方。


まずFari Trialのことだけれども、これKrisがオンになっちゃうだろう。

もしこれでKrisがなかったならば「8分の1ツリーオブノレッジ(Court Martial4×4)」が綺麗に・・・本当に綺麗な形を作れたと思う。けれどこの場合はKrisが優先される。

全クロス状態になっているから、ってのが一番大きな理由なのだけれども。小さな理由にKaties×Theatricalからヒシアマゾンが出ていることがある。

これだけの名牝を出した配合なのだから相性は抜群だ。そんでもってケイティーズファーストも立派な名繁殖よ。Kris×Katiesも良ければTheatrical×Katiesも良い。よってKris×Theatricalの相性も保証されるだろう。

だからこそKrisがオンになってしまう。全クロス状態であるし、実際にKatiesへ紐付けされているのはKrisだから。


これはディープインパクト×Seeking Goldにも見られる傾向なのだわ。

Seeking Gold×ウインドインハーヘアからはレディブロンドが出て、そこからゴルドブリッツやレイデオロが出た。しかしディープ×Seeking Goldの配合においてはSeeking Goldのパワーは鳴りを潜める。

ディサイファステファノスもディープにしてはパワータイプだけれど、サンデーサイレンスの表現が勝った靭やかで鋭い馬だ。むしろ普通のディープよりもサンデー表現が強いくらいよ。

この様に1頭の繁殖に対するニックス血統が二つ見られる場合は紐付けされた方が優勢とされる。しかも増幅される傾向があるという面倒くさいパターンだ。

別におかしな話じゃない。デインヒルDanzigのニックス血統を組み込んだらRrazyanaのパワーが一層オンになるわけだから。それを避けるためにHis MajestyやBuckpasserから新要素を引き出すわけで、血統はこうして変化していくものよ。


そんでもって、オンにしたならオンにしたなりにやり方はある。デインヒルDanzig要素を全く弄らないデインヒル産駒もないわけだから。

この場合はMr.P・Northern Dancer・HtRクロスが入っているのが素晴らしい。Kris以外のところをきちんといじってきた。Rosemontrなんて面白いところもクロスしているし、TheatricalはKrisに対する良い異系を引っ張ってきた。


二つ目のPokerの件。

これはRound Tableの母系であるAloeをPersian MaidとサンデーとSpecialから引っ張ってきているのが良いのよね。正確に言えばAloe=Foxlaw。もっと言えばPersian MaidクロスとFoxhunterクロス。

このあたりをきちんと弄っていないとアドマイヤムーンは勿体無いからねぇ・・・。上記Fair Trialのものと色々かぶって、良い形にはなっている。


ただ・・・あれよ。アドマイヤムーンって別にKrisを表現するための血統ではない。むしろ踏み台にしてネオユニ的な豪快さをオンにするのが超成功パターンだ。

ハクサンムーンがG1を勝ちきれなかったのは世代が悪かったのも一つであるけれど、Krisの繊細な速さがオンになっていたのも一つだろう。競られても跳ね返す様な図太さをKrisは伝えない。

アルキメデスとセイウンコウセイ、それとファインニードルは結構図太いからね。Mixed MarriageクロスによってKrisの繊細さを裏返せるのがアドマイヤムーン最大の長所だ。

言い換えるとNative Dancerの泥臭さをオンにするとも。ヒシアマゾン牝馬だてらに泥臭く追い込んでくる馬だよなぁ。




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