砂時計のくびれた場所

競馬の血統について語るブログ

注目される3歳牡馬

年明けの競馬は芝オンリー派に忙しさを与えません。暇です。

とりあえず昨年の活躍馬を簡単に振り返りましょう。

 

アドマイヤマーズ

「4分の3Halo・4分の1スカーレットブーケ」ですが、「Halo×Norhtern Dancer」の組み合わせを三度累代させた配合とも。

Salvinaxiaの増幅が行われていますので、非Blue Larkspurの絡みより「スカーレットブーケ×Salvinaxiaを軸として考えた方がイメージは掴みやすそう。先行能力の高さと内ラチ頼りの多さはLyphardらしい競馬です。

競馬ぶりはディープ牝馬に似通い、ダイワメジャー牡馬の図太さもしっかり受け継いでいます。現代に蘇ったバブルガムフェローという風情。スローならば皐月・ダービー・秋天のいずれもこなしましょう。

母系にあるメンデス、Lyphard×Caroの組み合わせは速いペースの先行をこなすに疑問が。その解消が為されているかどうかが一つの焦点です。

 

サートゥルナーリア

父ロードカナロアの伝えるスピードは最上級のものでして、S級産駒はそのスピードのままに中距離を走ります。

母シーザリオは好繁殖。これもまた道中のスピード能力で圧倒する類の表現を仔に伝えています。Habitatを弄ったエピファネイアなどは終い重視の競馬では二束三文の純粋なる先行馬でした。

本馬もホープフルSの勝ちっぷりは大変な内容ですが、兄同様に終い重視の競馬では脆い可能性があります。ジャパンカップや菊花賞のエピファネイアに近い内容の競馬をする印象ですから。

ルメール騎手への乗り替わりを「鞍上弱化」とする有識者の方も、そこを危惧するのではないでしょうか。ルメール騎手は終いを重視した乗り方をします。(しかし出遅れされたら一発で終わりですからねぇ)

 

ファンタジスト

ロードカナロア×Lyphardはスプリント傾向・・・母父ハーツクライや母父ディープインパクトの傾向ですね。

S級産駒の大きな特徴として「Special血統を有力なHyperionとして引く」があります。トニービンやBurghclereなどの英愛を引きますと、ロードカナロアの持つ短距離Hyperionがオンとなりやすいのかもしれません。

その分だけ「キングカメハメハ×サンデー」らしい脚質には出ますし、英愛の分だけしっかりと終いを使います。ただそれは適距離の場合に限った話で、朝日杯FSからしてもマイルはこなす程度。この春は停滞となりそうな。

むしろスプリングSなどの条件がこなしやすいかもしれませんね。アップダウンの強いマイルよりも、一定のペースで推移する小回り千八のほうが。

 

ニシノデイジー

3代母ニシノフラワーは牝馬にしてスプリンターズSを制した名牝。オーソドックスなDanzig好配合なだけに仔も優秀でした。

そんな良血もオーナーブリードのために零細にして傍系であるセイウンスカイの仔をなし、このニシノミライ-ニシノヒナギクは好繁殖の家にあって0勝のライン。しかし札幌2歳Sと東スポ2歳S勝ち馬の本馬を輩出しました。

本馬は好繁殖ニシノフラワーの持つ血を全てインブリードした配合ですから、突然変異的な一発はあります。スプリンターの血を増幅しただけあって器用な競馬をしますし、底がいまいち知れません。

ぶん回して札幌2歳Sを斬り捨て、中団から馬群を割りながら東スポ2歳をぶっこ抜き、ホープフルSでは内ラチ回しの勝ち馬を追って差して3着。なんでも出来すぎて気味が悪いくらいです。

一言に表せば「非SpecialのSpecialなお馬」ですからエポカドーロに似たところが。展開利を食ってなんぼ、好騎乗ありきではあります。

 

アドマイヤジャスタ

父ジャスタウェイの「4分の3アドマイヤラクティ」がしっかりと千八区分で先行しているわけですから、そりゃ強いに決まっています。

逆を言えば、やや先行力の担保が足りません。今までの位置取りが難しくなると強豪としての格がぼやけます。差し・捌き・早仕掛けに強さを持ちませんので。

基本的にこの父の産駒はBusanda色が強い表現を持ちます。ハーツクライよりもずっとLyphard×Busandaが表現されやすく、先行しなくては意味がありません。

キタサンブラックなどに見られる圧倒的な先行力の担保は持ちませんから、距離延長をどれほどこなすかが焦点でしょう。

母アドマイヤテレサは5勝馬。うち2勝は1800mですが、あとは1200m・1400m・1600mを差し追い込んでいます。

 

ラストドラフト

父ノヴェリストにとっては初めての重賞勝ち馬。母マルセリーナはディープインパクトの初年度産駒で、初めてのG1勝ち馬。初物に縁のある母子です。(また本馬はマルセリーナの初年度産駒)

種牡馬ノヴェリストはそのパワフルさに長短所があり、これを克服した産駒は少数。少数派は「ドイツをフランスでほぐす」を地で行く配合で、本馬が実に代表的な立ち位置に。

その主軸を担うのが「4分の3Crepello・4分の1Monsun」の配合形で、Crepelloは英国産の英二冠馬ですが母父Mieuxceや母母母Dulceは純仏の血統です。(父Donatelloは仏産でも純英愛血統)

ディクタスやFox Cub、Specialなんかに絡む楽しい血統でして、ハービンジャーやヴィクトワールピサもこのCrepelloのクロス。これらの方向性にノヴェリストをまとめたのが本馬と言えます。

京成杯の内容はLyphardじみた先行競馬。「中長距離的に図太いワールドエース」と、当座のところは。

 

ヴァルディゼール

アーモンドアイと同じSex Appealクロスのロードカナロア産駒。マデイラやゴットフリートの従兄弟にあたります。

ロードカナロア×ハーツクライで「8分の1アイリッシュダンス(Court Martialクロス)」の配合形で、ファンタジスト(8分の1ウインドインハーヘア)と似た形で好位に沈みます。いい具合に抑えが効き、きちんと弾けられる。シンザン記念は千四型に見られる京都マイルの勝ち方でした。

道悪適性が高めで、根っこのところはジリ脚でしょうか。阪神1400mが似合いそうなタイプで、登坂を絡めた瞬発力には不足があるかも。シンザン記念は間に合わせた内容とも言えますから、本質的はスピードで圧倒する先行馬という風・・・という予想。

NHKマイルCでのパフォーマンスでそのあたりは決着がつくでしょう。

 

クラージュゲリエ

「4分の3トゥザグローリー=トゥザワールド」ですが、ラブリーデイなんかともイメージは被ります。

Robertoの機動力とSpecialの気性、これを当代随一と名高い内回りの名手が走らすわけですから京都2歳Sの勝ちは必然の域。誰もが良い位置を取るために脚を使っていく中で、一頭だけ温存して、一頭だけ最適のルートを得て。これで勝てなかったら「前走の走りはなんだったの?」ってものですよ。

皐月賞で期待のかかる馬ですが、現代皐月賞はNorhtern Dancerの本数が少ない馬が有利です。過去最多本数はドゥラメンテの4本で、次にエポカドーロの3本が続く程度。ダービーとの比較を考えるばかりでもかなり面白い話なのです。

本馬は母が非Northern Dancerクロスなので、その点で安心感はあります。ただ「Northern Dancerの本数≒Native Dancerの本数」ですので、そのあたりに不安は抱えます。

母の父タニノギムレットは非Northern Dancer血脈ですが、Native Dancer系のズルリとした柔らかさは伝えます。Blue LarkspurもNative Dancerも特たる形なくアウトを取らない表現は、持続力に優れても際立つ脚を使えないものです。札幌1800mのぶん回しにはその匂いをかぐことができます。

ストライドロスがあったにせよ、京都2歳Sの勝ち方は全ての要素がハマりにハマった辛勝であったでしょう。

 

まとめ

今年の3歳牡馬は展開利を貪る点でユニークです。外を回して台頭したタイプは皆無と言ってよいでしょう。

そういった類の馬は「注目したい3歳牡馬」のタイトルで取り上げる予定ですが、私事と予想もあって先のこととなりそうです。

目下のところ、クラシック展望の一番手はサートゥルナーリアに間違いがありません。しかし内容ほど突き抜けているかは微妙なところで、この季節に新しく台頭する馬に足元を掬われる可能性は否定できませんね。

もうそろそろNorthern Dancerの本数が少ない、皐月賞タイプが現れることかと思いますが。

 

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