砂時計のくびれた場所

競馬の血統について語るブログ

2021年天皇賞秋回顧

スローの秋天になると、というか、秋天は東京2000mですから、基本的には母か母父が短距離の方が勝ちやすい。

タピッツフライはマイルのG1をいくつも勝っていて、ロードクロサイトも未勝利ながら芝とダートの1200mと1400mを走りました。このスピード能力とディープインパクトという巨塔の融合が秋天における大きな担保だったと言えます。

 

グランアレグリアは完全な敗北と言えましょう。コントレイルとエフフォーリアのような格を持つ馬が不在の年は探せばあります。秋天を勝てない馬ではありませんが、それでもこのレベルだと厳しかった。

それでも展開を探せば勝てるものもあるのでしょうけれど、それを言えばコントレイルの方が優勢。エフフォーリアの強さが際立った内容でしたが、今日のパフォーマンスは対等だったと思います。

 

コントレイルにとって痛恨だったのは逃げ馬不在の1枠1番でしょう。例えばこれがジェンティルドンナだったら好スタートからサッと控えて外から来る馬を迎え入れることが出来ます。ジェンティルドンナの気性とか走り方とか、そういった総合力でそれが可能。有馬記念だって好位からズバッと届かせられます。

ジェンティルドンナとコントレイルは対極の適性で、そりゃスワーヴリチャードだとかほどに典型的なUnbridled's Songじゃないんですが、菊花賞制覇の大きな原動力となるくらいにはUnbridled's Songなのですよね。

それがエフフォーリアを追いかける展開となったのですから、ちょっときつい展開でした。ペースがもう少し厳しければ、また違ったとも思います。

 

コントレイルと歴代の三冠馬にある大きな差は中距離馬か中長距離馬かという点で、コントレイルはねじ伏せられる三冠馬なのに中距離馬なのですよね。かといってねじ伏せる方向に特化しているわけでもなくて、本当に端正な中距離馬という。

純粋の差しでも味があるし、流れ込んでもやっぱり味があります。中距離馬という性質の難しさはオルフェーヴルやディープインパクトなんかのような英愛的スタミナが不在であることでしょう。

イーブンペースで中距離を戦った時はコントレイル>エフフォーリアで間違いありません。エフフォーリアはエピファネイア×ハーツクライの配合に対して素直な中長距離適性を持っています。中距離のガチンコを戦えば道中で脚は削がれるでしょう。

 

しかし現状の仕上げにおける話であります。仕上げにおける評価はほぼ満場一致でコントレイル>エフフォーリアでした・・・。これで負けたのはきつい話です。

同等の仕上げにおいても同じ評価が出来るかはやっぱり別問題で、競走馬の総合的な評価においてはエフフォーリア>コントレイルなのかもしれません。

しかし馬の評価は亡くなって10年くらい経たないと分からないもんですから、30年後くらいに「今にして思えば、あの秋天は正しい評価だったんだな」とか「やっぱり繁殖能力は実戦だけじゃ分からないもんだな」とか議論が起こるんでしょう。

 

騎手に関しては・・・福永騎手はスマートに負けるなぁと思いましたねぇ。

私のPOG指名馬であるアスクヴィヴァユーもスマートに負けてしまいました。別に悪い意味、皮肉じゃなくて。

福永騎手は言い訳の余地をきちんと残すんですよね。それは理屈に沿って負けるということで、意味の分からん負け方をしないと。

アスクヴィヴァユーはドスローのド後方から展開してさっぱりの内容。しかし新馬戦ですから道中で動いてもやっぱり批判の的になっちゃいますよね。この時期の新馬戦でがむしゃらになられても困ります。

コントレイルに関しても負けてしまった仕方のない理由があるわけです。スローだったし、逃げ馬不在だったし、最内枠だし。・・・勝負師なら分かりきったシナリオに抗えよって話なんですが。

「出来ることを指示しておけば、ちゃんとそれをやって帰ってくる」という評価は間違いなくあるはずで、トップトレーナーには望ましい適性なのかもしれません。調教師の努力がそのまんま結果に結びつくわけですから。

そういう性質でトップクラスに属する福永騎手はどうやっても腐らない存在です。しかし1頭の素質馬に座り続けるのは難しさがありまして、「なにがなんでも福永」という評価はないと思うのです・・・。

川田やルメール、そして横山武史。ここらへんなら「絶対にどこかでリベンジしてくれる」という信頼があるでしょう。噛み合ったら勝てるんじゃなくて、噛み合わせて勝つことが出来ます。

展開への掌握力というか、影響力に問題があるのです。条件が違えば話もやっぱり違うんですが、王道路線におけるソレもやっぱりやっぱり違う。

どっちかと言えば、ルメールと川田は肉食系なのです。相手に害を与える騎乗が出来ます。それを以て利とするムーブが出来るんすよ。福永騎手は草食系なんで、利というものは積み重ねるものなのです。

けれどルメールは相手のベストポジションで利を貪るし、川田は相手に不利を与える。それらがハマったときに草食った福永が飛んできても、何もかも遅いでしょう。

もちろん、草喰いまくったジャスタウェイの弾けっぷりにはロマンがありました。なかなか日本じゃ上手いこと運ばない適性なだけで、上手いとか下手とかの話じゃないんでしょう。

 

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