砂時計のくびれた場所

競馬の血統について語るブログ

2022年凱旋門賞回顧

FrankelについてはPOG指名馬のレヴァンジルからTwitterで発言していましたが、「スピードの担保はあるけれど、スピードの成長力は薄い」という。

それに苦しんだのがソウルスターリングで、阪神JFを勝てるくらいのスピードがあるのにオークスを勝ってからは未勝利に終わりました。スピード能力に苦しんだのは安田記念勝ちのモズアスコットも同様。それ以降に芝の勝鞍を得ていません。

その裏を返せばアルピニスタであり、ドイツの異系血統を持つ牡馬を相手にどろんこ凱旋門賞を勝ち切りました。

 

Frankelという血統に脈々と注ぎ込まれた、快速と底力の驚異を知らしめた内容と言えるでしょう。

血統表ばかりを見れば、今年の凱旋門賞は掲示板にソウルスターリングの名があって不思議はありません。そういうイメージの決着であり、メイケイエールの敗戦と合わせて含蓄のある週末でした。

 

アルピニスタというのは2400mを踏破するにあたり、日本競馬的見方をすれば「Hyperion血脈少なくない?Galileo産駒なら分かるけど」という配合です。

似た傾向のある配合馬にイスラボニータがあり、タイトルホルダーを壁にしながら進出し、勝負どころで壁をどけたら馬なりに先頭に躍り出てしまう。実にイスラボニータ感のある競馬でした。

あれで凌ぎ切れるのが実にフレンチです。由緒正しきイギリスの血統ではありますが、母の構成血統はフランス競馬で結果を残した馬が非常に多いのが特徴。これでFrankelと相似配合やるのは格好いいですね。

これが成功するとなれば、シルバーステート×FrankelをDanehill≒Niniski≒Sadler's Wellsの根拠で狙ってもいいかもしれません。しかしNiniskiのキーはWild Riskなどのフランス血統にあります。アルピニスタの血統はそこが大変優秀なのです。

 

Lady Juror的粘着力を表現するにあたり、Alzaoという血統の優秀さを日本競馬は知っています。その晩年の傑作であるAlbanovaを祖母に持つアルピニスタが、こういう血統でどろんこ凱旋門賞を勝つっていうのは、本当に面白いですね。

Frankelという血統の素晴らしさを語れば、これほどの粘着力があってもスピードを担保するという点ですよ。それも2400mにおけるスピードを担保するわけですから、私にはちょっと異次元。

グランアレグリアなんかは中距離血統まみれの最強1400mですが、それに近い感動を覚えます。この配合から最強2400mが出るわけで、Frankelの特徴を踏まえているからこそ理解可能ですが、そうでなければ謎の生命体でしかない。

 

事前に上げた記事で書きましたが、本当にMiswakiというのはえげつない。Seeking the GoldとかWoodmanとかマイニングとかをイメージすれば分かりやすいんですが、4分の3が同血なのに、Miswakiって圧倒的に素軽いんですよ。

素軽すぎてHernandoはカーネギーに負けたまであるでしょうけれど、その素軽さを補って余りあるAllegrettaの仔こそがアーバンシー。名牝にして名繁殖、凱旋門賞勝ち馬にして大種牡馬Galileoの母。

サイレンススズカのスピードの源とすら言えてしまうMiswakiを、Allegrettaが支えるという構図は日本では考えづらいものです。

 

日本競馬の考え方として、牝馬はスピードの源なんですよね。ウインドインハーヘアですら、ディープインパクトを経由すればそうなっちゃうわけですよ。

だから牡馬のスピードを牝馬で支えるという考えはなくて、モーリスを考えたら、ダイナアクトレスのスピードを如何に伝えるかって話になるのです。

卵が先か鶏が先か、という話にもなります。おそらくこの差異にこそ凱旋門賞制覇の難しさがあり、卵を先とする日本競馬と、鶏を先とする欧州競馬では、文化が違うのです。

Miswaki産駒の凱旋門賞勝ち馬を母として、父にSadler's Wellsを迎えてGalileoを出す・・・この異次元の配合は現代日本競馬の文化にはありません。アメリカの2歳チャンピオンにディープインパクトを種付けするのが王道ですよ。

 

これは日本競馬に染まった考え方をしているだけのような気もします。オルフェーヴルの配合はノーザンテーストが全てなのか?って話で。ノーザンテーストを支えたロイヤルサッシュとグランマスティーヴンスに価値はないのか?

アルピニスタのMiswakiインブリードと、オルフェーヴルのノーザンテーストインブリードにどの様な差があるのか。タイトルホルダーにおけるMr. Prospectorインブリードにしてもそうですよね。

それでも・・・ちょっと、Allegrettaさんはわかり易すぎるくらいに化け物です。キングズベストは重苦しいし、エイシンフラッシュすら種牡馬としては重苦しいし、Galileoも当然のように重苦しい。Frankelにすらその影響を及ぼしてくる。

そりゃMiswakiの素軽さを称えたくなりますよ。特たるイジりもなしに4代目から主張してくるとか、望田潤先生の「La TroienneとPretty Polly」の話を実感します。名繁殖は遠くからでも主張してくるって本当ですわ。

 

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