砂時計のくびれた場所

競馬の血統について語るブログ

キタサンブラック産駒を考える

阪神JFに出走するラヴェルの血統表を眺めて色々思うのです。

 

まず比較対象としてリバティアイランドがおるわけですが、種牡馬ドゥラメンテというのは淡い馬体にスラッと伸びた脚、Tom Fool的な中距離馬を出しやすい傾向を感じています。それで成功しているのがハーツクライとの大きな違いで、ハーツのそういう馬は晩成しても重賞止まりなんですよね。

これはキンカメの真摯な気性がアドバンテージとして大きく、ドゥラメンテ産駒は淡い馬体で一生懸命に走ってくれる。だからこその難しさがあり、レッドアヴァンティからしても、脚元の弱さがあるような。

脚元が弱いというより、日本の馬場との不適合があるのでしょう。Specialの表現も強い種牡馬ですから、高速東京とは相性が良すぎて走りすぎてしまう。気を抜いて走られる馬なら故障せずに済むんじゃないかなぁ。それだと走らないのが難しい。

 

対する種牡馬キタサンブラックは自身が頑丈に走り抜けただけに、そういう不安要素がありません。如何にしてスピードを抽出するか、どういったスピードを取り込むか、ですね。

ラヴェルの母サンブルエミューズはハービンジャー相手にもスピードを供給したレベルですから、キタサンブラックへも難しくありません。そしてキタサンブラックの最も秀逸な点は、極端なスピード能力を相手に要求しないところですね。

イクイノックスはキタサンブラック産駒における最高峰の配合で、これを超える配合はおそらく現れないでしょう。コンセプトモデルとして君臨し続ける配合と表現ですから、これの長所と短所はキタサンブラック産駒のそれと同じ。

ギアをガッと上げてバキューンと「差し切る」という表現ではなくて、長い距離を使って詰め寄り、「押し切る」表現です。

これはハーツクライ的ともTiznow的とも言える表現で、そうですね、追い込み馬として勝ちきれるハーツクライがキタサンブラック産駒です。この表現で成功し得るというのは、奇しくも、キタサンブラックの秋天から感じられたのではないでしょうか。

 

秋天は大阪杯と合わせて「中距離でも強いんだ」という証明のために出走したレースでもあり、種牡馬としての価値を高めるべく挑んだ舞台。これを勝ちきったことにより証明できたのは、「泥んこの馬場を突っ切るなんて、すごいスタミナだ!」という、あんまり2000mで示す必要のなかったものでした。

今にして思えば、示したものは出遅れての競馬で長い脚を使い切ったスタミナであり、逃げ先行の最強馬が示すには趣の異なるものでした。つまり、「ステイヤーとしてのスタミナ」ではなく「差し追い込みとしてのスタミナ」を証明した一戦であったかと。

12.4秒くらいで走るのがめちゃくちゃ得意です!というスタミナももちろんあったかと思いますが、11.8秒~11.5秒くらいで淡々と詰め寄る脚もあります!というスタミナもあったというね。

それは泥んこ馬場だったために数字では分かりづらいものとなってしまいましたが、イクイノックスが父の素晴らしさを同じ舞台で示して見せました。あれがキタサンブラックの素晴らしさです。

 

キタサンブラック×サンブルエミューズのラヴェルもそういった強さがあり、アルテミスSも「ビュッ」と差し切った感じはしません。速く走り続けて押し切った様な走り。

ビュッと弾けたのはリバティアイランドで、追い出しのタイミングが遅らされた分だけ届かなかったように見えますが、その実、お互いの長所はある程度まで出した結果でしょう。

リバティアイランドに関しては別に書きますが、ラヴェルはマイル戦ならあれでベストパフォ。少頭数なのも良かったし、リバティアイランドをマークできたのも良かった。

マッチレース的な決着ならば頭数は関係がないものの、本番でもリバティアイランドと併せて外から行く場合は、伏兵のイン差しなどに敗れる可能性は考慮すべきかな。Tiznowは徹底した前受けからGiant's Causewayを捻り潰しましたが、ああいう競馬が出来る馬かは分かりませんのでね。

半姉から見る差し競馬の馬であれば、伏兵は前受けかイン差し。フルゲートの場合は積極策も視野に入りますから、本番はなかなか厳しい競馬になりそうです。

 

うーん、キタサンブラックってのは、ジャッジアンジェルーチの影響が意外と大きいんですよね。オレハマッテルゼ的な部分は大なり小なりあるわけでして。

ラヴェル自身も13年京都牝馬Sのハナズゴールみたいなイン差しは可能でしょう。強い逃げ馬が番手を散らして行く様な展開ならば、それを縫って迫る形。

ジェンティルドンナのように多少詰まってでもグイッと差し込む・・・ああいうイン差しは難しい。もっと適した例はイスラボニータですね。前が空いた瞬間にカキーンっとギアが切り替わる様な、ああいう差しはね。

やはりイメージは「押し切り」で、トーセンラーじゃなくてスピルバーグの質ですね。アーモンドアイと言っても大きな間違いではありません。差すんじゃなくて追い抜くんですよねぇ。

 

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