チチカステナンゴは12年1月13日に亡くなっていて、12年の産駒がラストクロップ。日本に残した産駒は僅か3世代で、この異系の種牡馬のポイントを捉えるには時間が足りなかったと言うべきか。オープンクラスで堂々と争っているのはピークトラムとケツァルテナンゴの2頭だけだ。
ケツァルテナンゴはチチカステナンゴ✕クロフネ✕クロフネ✕トニービン✕ノーザンテースト✕ガーサントの配合形。シヤダイクリアーの牝系で、近親にはダイナマイトバディ・・・じゃなくてダイナマイトダディ。はい、ここ大事でーす。
サクラユタカオーの代表産駒その5くらいに位置するダイナマイトダディ。つまりSolarioとNasrullahの組み合わせ、Royal Chager的な、Turn-to的なスピードに対してニックスを持つと考えても良さそう。しかし組み込まれたのはトニービン→クロフネとTurn-toスピードの欠片もない。
チチカステナンゴの母スマラがSir Gaylord=Swansea3*5の全兄妹クロスを持つ。また父母父Tip MossがKlairon✕Alycidonに依るSweet Lavendar=Rose Red4*5を持っているところにも注目したい。これもまたTurn-toスピードを支える重要な血統である。
あとKlaironはLuthierを通して伝わっていて、この2代母はガーサントの母。Luthier✕ガーサントはあまり見ない配合形だが、トウショウと社台の名血が出会う時に目にすることとなるだろう。ドゥラメンテ✕スイープトウショウとか、ルーラーシップ✕ウオッカとか、可能性はいくらでも転がっている。なんだったらサムライハートでもいいんだぜ!
あと2代父Kaldounがフォルティノとヴェンチアを通じるRelicクロスである。もー、ここまできたら突っ込まざるをえないよね。シスタートウショウとやっていることがほとんど変わらない。
こんなの社台の名血相手じゃなくてトウショウ繁殖につけて欲しいわ。どうして逝ってしまったのチチカステナンゴ。生きながらえて今も種牡馬生活をおくっていたならば、トウショウ繁殖食べ放題であったというのに。(15年9月にトウショウ牧場は閉鎖。当牧場の名牝らはノーザンファームへ売却された。)
ケツァルテナンゴの話に戻すと。
母ダイワオンディーヌの大きな特徴にDeputy Minister≒ノーザンテースト3*3がある。クロフネ✕トニービンはカレンチャンを輩出したニックスでもあり、字面ほど中距離的な靭やかさを演出する配合形ではない。頑強さの勝ちすぎる配合であるためにダイワオンディーヌ自身はダートを主戦場とした。
その上にチチカステナンゴが配合されて産まれたのが芝の中距離を主戦場とするケツァルテナンゴである。これが実にクロフネ的な馬で、「クロフネサンデーノーザンテースト」みたいな馬である。力っぽくも緩慢に伸びるイメージ。
Bold Rulerクロスのこともあって緩慢すぎることもないが、一流を相手にするには弱点と言わざるをえないところがある。重賞くらいなら勝ち負けする機会がありそうなものだが。
そしてピークトラムのお時間です。つまり本題。
最大の特徴は母タッチザピークがBuckpasserクロスであることで、クロフネの緩慢さを弱点とするケツァルテナンゴに比べると優秀な配合と言えよう。Fabulous Dancerとの連携を考えればLa Troienneは弄るべき要素で、クロフネ一本では物足りなく思う。
また母父のスペシャルウィークが優秀で・・・あることは既に幾つかの例が証明しているが、今回の場合においても同様だ。Tahran≒ヒンドスタンやVaguely Noble≒セントクレスピンなどの単純なニアリークロスも魅力的であるが、Nijinskyを抱えたサンデー直仔なのが美味い。
Haloの靭やかさにはノータッチでありながらもPharamondやLa Franceには手垢をつけていく配合である。しかもMountain Flowerのスタミナにもセントクレスピンは強く影響を与える。靭やかなサンデーの中距離馬ではなく、靭やかさをスタミナへ変換した中距離馬へと出やすい。
母タッチザピークはスペシャルウィーク✕Mr. Prospector✕Deputy Minister✕Buckpasser✕Northern Dancerの配合。早熟のスプリンターなのは母父Mr. Prospectorの影響が大きそうで、Nijinsky✕Mr. Prospector✕Deputy Ministerの硬い身体が伝わりすぎたか。だがダート挑戦は大きな失敗で終わっている。経由がどうであってもSSMrBuのラインを取る意味は大きい。
※Sunday Silence✕Mr. Prospector✕Buckpasser
そこにシヤダイクリアーに対して立派なアプローチを行ったチチカステナンゴが配合されてRoyal Chager的Turn-to的な働きを組み込むことになる。Haloの靭やかさを増幅する仕組みであるが、もとよりNorthern Dancerは濃く配合されているのでNatalma≒Cosmahの靭やかさをオンにすることも難しくない。
スペシャルウィークはダンスインザダークほどNijinsky丸出しではないにせよ、あまり登坂を駆け上がるタイプの血統ではない。あくまでも比較対象はグラスワンダーであるけれども、活躍馬は比較的平坦や外回りに特化している。それもまたノーザンテーストやMr. Prospctorで調整は可能だ。インティライミみたいな馬もいる。
タッチザピークは函館1200mを前のめりに押し切った馬で、スペ✕Mr. Prospectorの配合通りに小回り俊敏に傾いた馬。だがこれにチチカステナンゴが配合されると・・・Sir Gaylordの平坦力の方が勝る可能性がある。スマラがクロス持ちだから。
NijinskyやMr. Prospectorのパワーでスプリントした繁殖にSir Gaylordな靭やかさを供給する・・・これはまるっきりディープインパクト産駒と同じやり口だ。1800mベストの外回りベター平坦巧者が出て当然だ。
中京記念では登坂後にスパッと切り抜けて行ったが、その上を良血ディープのガリバルディが容易く撫で斬りに伏す感激の展開。やっぱりディープには勝てないことが証明されてしまった。
けれど新潟ならディープと同等に戦えるだろう。あとはモチジュン先生の仰る「チチカス魂」がいい方向に発揮されることを望むばかりだ。ノーモア逆噴射。
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