砂時計のくびれた場所

競馬の血統について語るブログ

スクリーンヒーロー産駒の魅力

スクリーンヒーローはモーリスととゴールドアクターを輩出した種牡馬で、現役時代はウオッカを相手にジャパンカップを勝った。

初年度産駒にはモーリスがあり、これがスクリーンヒーロー産駒の2勝目を挙げた。しかも京都千四の新馬戦、これを1分20秒6で勝ち切った。2歳レコードホルダーのアストンマーチャンが持つ1分20秒3に迫る新馬戦レコードである。(栗山求先生のブログをほとんど引用してる。)

栗山求先生も望田潤先生もダイナアクトレスの名をよく挙げるのは、この1400mレコードに依るところが大きいのではないかと。京成杯AHで世界タイレコードを樹立し、当時のマイル戦線を先頭で走り続けていたニッポーテイオーを相手に勝ち負けしていた名牝である。

ダイナカールダイナフェアリーダイナオレンジダイナシュート・・・。黄色と黒の縦縞で有名な社台レースホースの有したノーザンテーストの娘達だ。ダイナアクトレスは中距離のダイナカールと双璧をなす短距離のノーザンテーストっ娘。

グラスワンダーのピッチはKingmamboのピッチと配合論として大きな違いは見られない。

※「Raise a Native✕(His Majesty=Graustark)✕(Northern Dancer+Fair Trilai+Hyprion)✕Nashua

ただグラスワンダーの父Silver HawkはAmerigo(Nearco✕Hurry On✕Gainsborough)やMatchiche(Rabelais4✕6*4)などの要素を持つためにNashuaが表現されやすく、Tourbillonとの相性が非常に良い。グラスワンダーの母は非Tourbillonであるが、これはSilver Hawk産駒としては珍しい。その代わりThe Tetrarchの強いSoaring牝系ではある。

だからグラスワンダー産駒はそれほどピッチで走るものはなく、ノーザンテーストとの組み合わせでアーネストリーサクラメガワンダーなどを出したくらいだ。これはKingmambo直仔のキングカメハメハが極端に速いピッチで走らなかったことと似ている。オルフェーヴルもそうであるが一流のピッチとは靭やかな要素を併せ持つもの。

スクリーンヒーローサクラメガワンダーと同じ「グラスワンダーサンデーサイレンスノーザンテースト」なのだが、こちらはHalo≒Red Godによる靭やかさが活きた配合であり、それがグラスワンダーの靭やかさと噛み合った結果。

Danzigノーザンテーストであるからもっと短距離短距離しても良さそうなものだ。ダイナアクトレスグラスワンダー安田記念2着コンビが組んだのだから、それはもう安田記念爆走間違いなしである。

けれど上で書いたようにグラスワンダーは配合そのものを見れば靭やかな要素満載のRoberto直系馬であるし、ランニングヒロインはダイナアクトレスの俊敏をサンデーサイレンスによって急激に緩和した繁殖だ。これらが相似配合気味に重なると、サンデーの靭やかさが勝るのかも。

そのスクリーンヒーローの産駒は「グラスワンダーダイナアクトレスの仔」とよく表現されるマイル王モーリスが1番で、2番に有馬記念勝ちで堂々と名乗りを上げた中長距離の雄ゴールドアクターがいる。

僅か3世代からこの二頭のG1馬を輩出したこと。

しかもレベルの高くない繁殖を相手にそれを成し遂げたこと。

そしてモーリスとゴールドアクターはそれぞれ配合のコンセプトが異なること。

この三つの理由からモチジュン先生は種牡馬スクリーンヒーローを褒められていたかなぁ。例えばダイワメジャーなんかは先生の定められた黄金配合からは逸脱していないわけで、活躍馬の配合は画一的である。

モーリスの配合に関しては今度書くとして、今回はゴールドアクターの配合について軽く触れたい。

ゴールドアクターの母ヘイロンシンの配合・・・これを一言で言うなればDanzigニックス血統の寄せ集め」である。Danzigの観点からスクリーンヒーローへアプローチしている。

どうしてそんな配合が成り立ったのかというと、キョウワアリシバの母SlumeifがDanzigとニアリーの関係で、そのくせThe Dogeを有する不思議。この血統はChief's Crownにも見られる。更にJudy-Raeの牝系であるからヤマニンパラダイスGreen Desertとも同じである。

Alydarもまたヤマニンパラダイスと同じであるから、おおよそ・・・おおよそであるが、キョウワアリシバ≒ヤマニンパラダイス=Aurora=Bertoliniとも言えるかな。

しかしマナードはLavendula4*4かつDurban=Sheba5*5かつLady Joror5*5かつFair Way=Pharos5*5*5*5という配合系で、これはバリバリの短距離力増幅パティーン。

これどこれもグラスワンダーと同じThe Tetrarchを根っこに抱えた配合で、マナード産駒は・・・そう「案外」というべきか。案外短距離に固執するようなことはなかった。おおよそ千六千八を主戦場にしたのだが、シンビクトリーなんかは二千四のエリザベス女王杯で14番人気から3着に滑り込んだ実績がある。

実際のところ、「距離的なスタミナを強く持っているのはモーリスとゴールドアクターのどちらか」ということを考えたとき・・・実馬を見なかった場合は多くの人がモーリスを挙げると思うのよね。Norsemanのスタミナにさりげなくプリメロをかぶせている所は流石で、母父が母子二代凱旋門賞制覇というスタミナを持つのだ。「ジャパンカップ勝ち馬✕凱旋門賞馬」の配合なのだから・・・と。

対してゴールドアクターは母父にキョウワアリシバというドマイナー。「君は何がどうして種牡馬になっちゃったの?君が遺伝子を残すくらいならタップダンスシチーが残すべきじゃないの?ふざけんなよ?」と喧嘩をふっかけたくなる。

面白いもので、こうして重賞も勝てなかった名血統が仕事をすることもあればさ。逆にG1をいくつも勝った馬が繁殖として仕事をしきれない。まぁ30年後にタップダンスシチー持ちがG1を勝つかもしれないから一口には言えないところだが、それにしたって先にキョウワアリシバが仕事をしたことが面白い。苦い。

Danzigニックス血統ということは、まぁ場合にもよりけりなのだけれども。とりあえずDanzigのスプリントを邪魔しないし、Danzigの走力を上手に長い方へシフトさせるし。つまりグラスワンダーのスプリントに触らない。ダイナアクトレスのスプリントはランニングヒロインのサンデーサイレンスで既に殺されているしな。

マナードもDanzigへ影響を与えそうなものだが、Haloを手入れたDanzigには強い影響を与えきれない。一応血統だけを見ればSulemeif≒Danzigと言えなくはないんだが、効果としてSulemeifが強いスプリントを伝えることはない。

考え方を変えてみて「ゴールドアクターの配合で短距離を走るとき、何を持ってスプリントするのか」を論じた場合。上の通りすぐに反論が浮かぶほど難しい話になる。逆説的ではあるが「ヘイロンシンのスプリントを活かす要素をスクリーンヒーローは欠片足りとも持たず、むしろスクリーンヒーローの中距離力を活かす要素ばかりがヘイロンシンには揃っている」という結論になる。

逆にモーリスはAmerifloraやダイナアクトレスのスピードをメジロフランシスが活かしすぎなのだ。

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