秋華賞の基本は好位からの流れ込みで、特注は岩田や浜中のイン差し。
基本は基本に過ぎず、そこからの応用がなければ簡単に前が塞がる。京都二千はペースが厳しくなりがちで、秋華賞においては、直線入り口でズルリと後退する馬が続出する。スローならスローで前の馬は切れ負けして壁になるんだ。
大々的な壁が生じるのは、本命馬がまくることによって外への膨らみが制限されることが、理由の一つとして挙げられる。そのくせコーナーワークで加速しなければならないレースであるから外へ膨れて行く。制限された外へ流れていく馬群の中にあっては、進路が内しかない。
イン差しというのは弩級の技術で、特に秋華賞でそういうことをするのは上記の二人しかいない。武豊は好位~中団から外へ開くし、他の騎手も大概そんなものである。ミッキークイーンやジェンティルドンナもそういった勝ち方をしているのだ。
ただ、穴馬を外から持ってくのは限られた騎手だけだ。
武豊がベターなところだが、幸四郎は京都に限定すれば兄貴より旨味がある騎手である。先日もジェンティルドンナメモリアルでトーセンビクトリーを勝たせている。Specialの逃げだな。
余談 幸四郎
幸四郎は引退の噂があるけれどねぇ・・・。177cmって規格外の身長であるし、これが平地の騎手であるというのは恐ろしい話だ。しかも酒好きというんだから若死してもおかしくはない。ファンとしては長く乗ってほしくはあるけれど、早く引退して欲しい気持ちも強い。兄弟でG1制覇の可能性があるうちに調教師になってくれればいいな。
未だその手腕に衰えはなく、近年で目立つのは連続乗り替わりで臨んだウインバリアシオンの春天だろう。(岩田が前週の開催で騎乗停止処分→当日にシュタルケ落馬→早々に唾を付けていてば幸四郎に白羽の矢)
元々機動力のあるタイプが得意であり、また中距離以上の京都は鬼である。岩田で内を突くウインバリアシオンなら勝ち味もあっただろうが、失敗した場合は驚くほど惨敗するのが岩田である。シュタルケは切れっぽい馬が得意というわけでもなかったし、候補の中で最も安定感のある騎手が武幸四郎だった。勝ってなんぼのG1で安定感を言われても仕方のないことではあるが。(シュタルケは逆にズブい馬が得意。ワールドエースをマイラーズCで持ってきたりした。)
馬の下らせ方に関しては兄貴より上手かと思うこともある。早く外へ出しすぎるようにも思えるが、下りで大きく馬を動かすので壁を退けるために必要なこともある。これは武豊もよくやることで、ハイペースの前残りに終わったトーホウジャッカルの菊花賞でも、武豊は後退馬を気にしたのか3角前に大外へ馬を持ちだしている。
差しても先行しても短距離血統の小脚を要するのが秋華賞。なので勝利騎手の殆どが俊敏な馬を得意とするジョッキーだ。例外なのはアンカツさん・・・いやダイワスカーレットが例外なのかも。ともあれサンデー時代に即した騎手の勝ちが多いな。
なら牝馬の福永はどうしたのって話になるのは仕方がない。これがまた面白いくらいに不振である。彼は小脚で後出しするのが得意であり、馬群を捌くのも上手い。それでも飲み込まれるのが秋華賞という舞台であるらしい。
10年前くらいならラインクラフトでまくりかかったりと血気盛んな騎乗も見られたのだが、今の後出しでは伸び切れないらしい。また秋華賞はロングスパート戦になりやすく、彼の居座る好位~中団の位置はロンスパのドンピシャゾーンだ。位置を取ってから後出しならば決まると思う。
いかにロンスパを避けるか、というのが秋華賞の命題と言える。切れっぽい3歳牝馬が京都内回りを4Fで追いかけるというのは非情に難しく、そういった馬が本格化するにはやや時間が足りない。靭やかに4Fを切れるのは古牝馬の技だろう。
だから終い重点に乗るのが基本であり、時計の速さと終いの速さが両立するのが秋華賞。けれど中距離の切れとは古牝馬の切れだ。中距離の切れで差し込もうとすると位置が下がりすぎる弱点がある。この10年間で、33秒の切れで突っ込めたのは2分決着となったジェンティルドンナの年、あとは前半に負荷がかかった後にドスローになったダイワスカーレットの年だ。両方とも前残りの展開。
ロングスパートを追いかけて33秒で突っ込んだジェンティルドンナは非凡だろう。ヴィルシーナが最もジェンティルドンナを追い詰めたレースであり、また三冠馬の証とも言うべき名決着。剛腕で鳴らしたそれぞれの鞍上、内田博幸と岩田康誠が時代を感じさせる。
(ただ2番手から差したヴィルシーナが33秒9で上がっていて、秋華賞としては少々溜めすぎた感がある。)
秋華賞はVMの登竜門でもあれば、JC勝ち馬の登竜門でもある。
ミッキークイーンの様にマイラー気味の俊敏を持つ千八馬がじりじりと伸びたり、ジェンティルドンナやショウナンパンドラといった中距離馬が米血の俊敏性で一気に突き抜ける。
前者はHaloの俊敏性ではなく、米血の一本調子な部分を使った配合。
後者はHaloの俊敏に対してNorthern Dancerを基幹としたナスキロ靭やかを表現した配合。
ちょっと違うタイプにはヴィルシーナがある。これはHalo俊敏とハイインローのしぶといタイプで、最後の一伸びでナスキロに敗れる風潮がある。特にBlushing Groomは惜敗の象徴であり、他にスマートレイアーやホエールキャプチャなど。差しても先行しても物足りない。
ウチパクさんや武豊、池添謙一といった「適切な位置からきっちり伸びる」タイプの騎手が差しきれない残りきれないのだからよっぽどだ。Haloクロスはきっちり乗って惜敗まで、と見たい。ただし、彼女らはマイルでガチである。東京マイルでは本当にガチである。東京新聞杯とVMの鬼である。富士Sと安田記念は知らない。府中牝馬Sも割りとこなす!エリ女じゃやっぱり足りない!
このHaloクロスで勝ちきれない現象は、秋華賞七不思議があるとすれば、筆頭に挙がるものだろう。
人気どころではヴィルシーナの全妹ヴィブロスと、桜花賞馬ジュエラーがHaloクロス。ジュエラーが父ちゃんのヴィクトワールピサがHaloクロスで、これはダノンシャンティ産駒も同じだが、それを緩和する様な配合が決まりやすい。ジュエラーをヴィブロスと並べるのはちょいと話が違うかも。
Haloクロスがきれいに立ち回って・・・という競馬になりづらいのが勝ち味の薄さに繋がっている。出走してくるHaloクロスは上記の通りにマイラー気味の馬が多く、そういった馬がきっちり先行して、きっちり抜け出そうとすると能力上位じゃなきゃならない。
ヴィルシーナは三冠リーチのジェンティルドンナに対する尖兵だった。それだけに良い枠へ入ったし、しかも展開までハマったのだ。もしジェンティルドンナがいなかったらエリ女の様にマークされたり、あるいは枠が悪かったりしてしまう。
なのでHaloクロスは人気薄や2番手以降の実績馬から狙いたいところ。ダービー馬マカヒキ、安田記念勝ちのロゴタイプ、ここらへんはやはり人気薄からきれいな競馬で突っ込んできている。シンハライトはきれいな位置から汚く突っ込んできた。(褒め言葉)
あとストレイトガールも2年連続の人気薄からきれいに抜けてきたな。
Haloクロスは馬場が速い方が突き抜けやすくて、それはHalo≒Sir Ivorのスピードを伝えやすいディープインパクト産駒が高速京都のマイル~中距離を無双していたことも分かる。
長い
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