砂時計のくびれた場所

競馬の血統について語るブログ

泥沼から抜け出すマイル王~ルージュバック悲壮 秋天回顧

カンパニーもスーパーホーネットもハイペース下に於けるマイラーではなく、かといって切れ味の鋭いタイプでもなく、競馬が上手いというと語弊があるけれども、末脚に適応した位置を取れる馬だったのではないか。

モーリスに取って幸運であったのは、エイシンヒカリの絶妙なドスロー持続瞬発戦の流れが自分の流れにハマったことだろう。どうも他の面々は道中で負荷をかける流れに適性を示さなかったらしく、そういうことであれば2頭の安田記念勝ち馬が得手であった。

結局モーリスと同じ土俵から踏ん張ったのはロゴタイプだけで、あとは展開に左右されなかった後方の馬が上手にエスコートされてきただけ。ジャスタウェイがいたら33秒きっかしで差し切っていたかもしれないが、それだけの格を持った中距離馬はいなかった。

曲がりなりにも2000mなのだから、4分の1サンデーが勝つべきであった。不思議なことに秋天とはメンバーが揃わないもので・・・というには豪華なメンバーではあるけれど、府中の二千で最強を競う様なメンツではなかったとは思う。エイシンヒカリを本命に打つなら小倉二千とかの方が良かったし、アンビシャスを本命に打つなら阪神二千、サトノクラウンになら京都二千四、ラブリーデイなら福島二千、ロゴタイプなら中山千八、リアルスティールなら中山二千、モーリスなら東京千六、まぁみんな違うところからやってきた馬だ。アドマイヤデウスなら中山二千五だな。

何度やっても俺の予想は◎ルージュバックで◯ステファノス、△モーリスだとは思う。だが異なるベスト条件を抱えるからこそメンツによってレースは変わってくるし、それを承知で予想はしたのだが、それでもやはり武豊のペースは想定外だった。香港で刻んだ前2F26秒ってのはそこまで大きな違いがなかったのかもしれない。1秒くらいは誤差があるとは思っていたけれども、実際に13-12で刻まれると笑いしか浮かばないな。

イスバーン賞で逃げを譲ったように武豊はよっぽどエイシンヒカリの逃げ戦術に信頼を置いてなかったらしい。過去のレースでも出足はそこまででもなく、面白いことにエイシンヒカリの出走したレースは逃げ馬がほとんどいない。最も速い逃げを打ったのは都大路Sの35.0であり、そこからはエプソムカップの35.6秒、毎日王冠の35.9秒、秋天の36.4秒、そしてまた秋天では36.9秒。遅さに磨きがかかってるっ!

もしメンツを選んでローテを組んでいたとすれば陣営全体が目論んだ「強い逃げ馬エイシンヒカリ広報作戦」と言えて、その完成は香港カップとイスバーン賞の強烈な逃げ切り勝ちで完成したと言える。逃げは主張するが声高々には叫ばない。「一体誰がエイシンヒカリを逃げ馬と言ったかな?」と言わんばかり。

中距離戦で「春天の横ノリ逃げ」を淡々とやっていたようなもんで、本気の逃げ争いをした時にはそこまで強い馬ではないだろうし、その時には武豊も控える心づもりではあったかと。コメントを全てチェックしたわけではないが、おそらく武豊は強気のコメントは残していないはず。「うん、まぁ、馬が行きますし、行くんちゃいますか」という他人事風ですらあったかもしれない。

田辺裕信トウケイヘイローの逃げのときにヴェルデグリーンに騎乗していた。そのヴェルデグリーンのMahmoudさんが書き出したラップは今年のエイシンヒカリのラップに似ていたんじゃないかと思う。その点からこの逃げを潰すつもりはほとんどなかったはずで、それを番手で受ける方が妙味があった。クラレントの時でさえエイシンヒカリを上回ったのだから、ロゴタイプのマイペースで番手を取れたなら、そのときのパフォーマンスを上回って当然。6着より上は確保できるな、という寸法で進めたのだと思う。

むしろ田辺は武豊の内職を積極的に手伝ったのだろう。「ここで俺が豊さんを助けたら・・・それが一番みんな困るんじゃないかな」という打算。これもまた一つの嫌がらせであった。

ただ、ここまでのことになるとは予想してなかっただろう。やっぱりこの人を見て武幸四郎は育ち、その結果としての京都巧者があり、そしてディサイファで見せたG2競争の歴史に残る超激怒スローがあったのだ。

田辺はあのスローであったから馬が応えてくれれば勝ち負けまで見込んでいたと思う。モーリスと同じだけ弾ければ勝つ・・・安田記念の再生は十分にあった展開だ。しかもこれは後ろが一番つまらない状態で展開しているからね。そりゃ勝つのは前だわ。そうじゃなかったらG1である甲斐がない。G1馬がこれだけ前で受けているのだから、勝つのは前だ。

だからリアルスティールやアンビシャス、ステファノスに交わされてしまった事実に対してはちょいと反省の余地があるわけだが・・・ロゴタイプのために刻めるラップにこれ以上のものは果たしてあるだろうか?明らかにマイル側の世界だし。

リアルスティールステファノスは好スタートから控え続けての後方待機で、リアルスティールはそれが顕著。ペースの速いところで抑えながら進み、番手を下げたくらいだもの。差し馬の中で理想的な展開をしている。ステファノスも似たようなもの。

そのあたりのペース判断が出来た上で、実際に位置を動かせる場所にいたのがステファノスリアルスティールだけだった。ルージュバックはその煽りくらって何にもできずに終わってしまったし、外差しバイアスが利いていただけに半端な枠だったかもしれない。「これでルージュバックを買う下地が」とか言ってる場合じゃなかったな。

ペースの緩みがあったなら脚がたまった分だけねじ伏せる形へ持ち込めたと思うが、あれだけペースが淀みなく行って瞬発を求められてしまうと動くタイミングがない。少なくとも牝馬と戸崎のコンビだと絶対に動けなかった。あそこでねじ伏せに行かないからこそのリーディングジョッキーであるし、牡馬のスタミナ勝負になると脆いのが牝馬である。それでもまぁ、最後に伸びてこられるより脚を使い切ってくれたほうが馬券を買った身には嬉しいかな。

終わったレースで勝負されても陣営は喜ばないけどな。リーディングジョッキーが見限ったなら、それはそれで次に余力を使った方がいい。けれど秋天ほどの好条件はないだろうな。左回りを求めて・・・遠征をするか・・・。とりあえずはジャパンカップだな。

・・・それはそれで判断が難しいな。牝馬の切れで勝てるのがジャパンカップだけれども、ジェンティルドンナショウナンパンドラも中長距離で買えるだけの判断材料、つまり「馬群を嫌わない」「瞬間的な切れが抜群」「しかも外回りで一層切れる」というものだ。ルージュバックは「馬群を嫌う」「瞬間的な切れに欠ける」「どちらかと言うと内回りをねじ伏せたい」だから。うん、ルージュバックってあんまり切れないんだよね。

府中の千八と二千なら本命だけど、他の条件だとちょっと打ちどころがないかな・・・と。右回りを克服するならいくらでもあるんだけどね。割りとTom Foolなのにねじ伏せる舞台が府中しかないってのは不幸だ。

マンカフェ産駒ってだけで繁殖牝馬としての価値が高く、しかも名牝ジンジャーパンチの娘で重賞を複数勝利、内容も素晴らしい。規定では6歳一杯まで現役が続くのだが、個人所有なら5歳一杯、明け6歳くらいが引退の目安だろうか。

不得手というのはつまり負担があるということでもあり、事故のリスクを避けられなくなった場合は規定馬齢を待たずに引退ということもあるだろう。だがG1を勝ちきれないままだと会員の説得も厳しいかも。「頑張ってG1を勝ってくれたルージュバックですが、元々抱えていた足元のリスクが増してきたとのことで」と話を進めたい。

あんまり奥行きのある配合ではないから今年がラストチャンスだった可能性もある。来年春のドバイターフまではパフォーマンスを維持して欲しいが。

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