砂時計のくびれた場所

競馬の血統について語るブログ

ミルコのエルボー事件

全集パトロールを見ると川田が悪い様に見える。内から気合を入れて競いかけてきたミルコを強引にインへ押し込んだ格好。同じように前へつけていた2番のサンライズチャージ(藤懸貴志)の前方を遮る様にミルコは進路を取らざるを得ず、その結果藤懸は立ち上がって馬を御した。

とは言っても藤懸が完全な被害者であるはずがない。むしろミルコを外へ押し込んで自身の進路を確保しようとした加害者である。このせいでミルコは馬の前脚が川田の馬へ衝突するくらいにまで追い込まれてしまった。このまんまじゃ落馬するし、後ろは馬群が形成されているし。大問題の解決を速攻で要求された。

これが4角であったなら手綱を抑えて馬を御するしかない。だがまだ余力のある1角入り口であったから前へ進んで藤懸の圧から逃れようと考えた。後ろへ行くとレースが壊れてしまう。

ところが。川田は逃げが確定したと思って内へ寄せた。タイミングが実にシビアであった。ミルコが前へ逃れようとした、そのタイミングで、川田は内へ切り込んだのである。不注意であったろうが、前受けで飯を食っている人間特有の読みもあったろう。

またミルコが逃れたタイミングというのは1角の入り口であったから、気合をつければその分だけ外へ膨れてしまう。それぞれに言い分があっただろう。

川田「なんでこんな形で寄せてくるんだ。ぶっ殺すぞ。」

ミルコ「こっちは危ないんだ。進路空けてくれ。助け合おう。」

ミルコの声掛けとはつまりヘルプミーであったのだ。「ちょっとトラブルがあったんだ。」という意味で「空けてくれ」という意味の言葉をかけたのだろう。川田は先頭を行っていたから事情を知らない。逃げ先行において「進路を空けてくれ」だなんて厚顔な話である。むしろ、川田がここで進路を融通していたならば八百長疑惑が浮上しかねない。

事情を知らぬ川田がミルコの一声で進路を融通した。まるでツーカーの仲(死語)である。「今までにそういったことがあったんでしょうか?」と問われても仕方がない危険な行動であろう。「ちょっとトイレ行くから後ろ通らせて」と飲食店で頼み込むくらいの軽さで逃げ先行の進路を融通し合うべきではない。

ただ、ミルコは危険域を抜け出してなお追いっぱなしであったし、2角の入り口で例のエルボーが出た。これについてはパトロールビデオではこの2頭の位置関係を把握しきれぬため、結果から推測するしかない。

もしかすると川田はミルコをラチ沿いへ押し込む形で圧迫し続けていたのかもしれない。あるいは、ミルコが先頭を目掛けてただただ押しまくっていただけか。

前者の考えにおいては、殊更強い圧迫を受けていたために下がることも出来なかったという推測が立つ。強引に押しまくって外へ膨れながら併せ馬を保つしかなかった、と。逃れるにしても横の進路をよこしてくれなきゃ話にならないぞ、と。

後者の考えにおいては・・・ミルコの責任感(助平心)がそうさせたと考えられる。もしあそこで抑えていたら八方塞がりの3番手4番手となる。つまり好位であるが、そういう運びとするためにミルコは起用されたわけではないのだ。あくまでも先手先手の競馬を望まれてブレイブウォリアーの騎乗依頼が来ている。であるから単独の2番手か先頭が欲しい。自分の競馬で勝負を出来る位置を得るために進路を要求し続けた。

もちろん内ラチ1頭分は緊急避難のために空けておくのがセオリー。その1頭分へ押し込まれていたことはパトロールからも推測されるから、そこには川田の助平心も関係していることも更に推測される。進行角度の狭さと整地の偏りから最内は行き脚が鈍りやすい。もちろんあの形で内の馬が抜けてくるってのは芝でも大箱にしか見られない。(今年のAJCCでは内から強引に進路を確保した結果、4角で名繁殖候補が予後不良となってしまったが。)

みんながスケベだった。けれど二つの事件において当事者であり続けたミルコにおいては焦燥や緊張が先立ったはずだ。であればエルボーは八つ当たりの感が強いのだが・・・藤懸と川田の「あわよくば」で人馬の命を脅かされた男の八つ当たりならば、武士でもない限りは許されよう。

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