砂時計のくびれた場所

競馬の血統について語るブログ

芝萌えいづる 春天予想

気温が上がり芝もすくすく育っている。先週から始まった東京と京都の芝はかなりタフなもので、マイラーズCの上位陣は重馬場の安田記念を勇み喜んで突っ込んでくる様な馬で占められた。

特筆すべきはフローラSのアウェイク。この牝系は早期にパワー偏向するから重馬場で穴を狙うくらいしか出来ないはず。ところが良馬場で3着まで差し込んできたのだから牝馬にはかなり重い馬場と見える。

(全兄ダノンドリームだけが3歳以降に馬券になっている。タイランドCでフルーキーの2着、次走は重馬場の若戸大橋特別で3着。カイバ食いが良くなって体が出来始めるとスピードが失われる様子である。)

これがすぐに速くなるとは考えづらい。一昨年のワールドエースが1分31秒4を記録したが、その年の春天は34秒前半の上がり競馬となった。しかし今年は昨年の様にゴールドシップなんかの様なパワーを背景とした走りが重要であると考えられる。

それがまぁ予想の切り口となるわけだが。面白いくらいに軽い馬がいないから大した意味を持たないのが辛いところ。

カレミロやゴルシは緩慢なタイプであるが、その一方でパワーの背景となるものがあった。若いころにピュンピュン走るが、歳を重ねることで緩慢さがスタミナ化してパワーがそれに隠れた。

それを思うと6歳馬以降を狙うのが面白そうである。ファントムライトとか、リピート狙いでフェイムゲームとか。

だが4歳と5歳が豊作だからね。5歳はまぁ「ワンアンドオンリーの年(笑)」となりつつあったが晩成型が一気に台頭して戦力図が変わった。ゴールドアクターがおり、アルバートがおり、トゥインクルがおり。そしてモーリスが。

4歳はもっとすごい。ドゥラメンテみたいな馬鹿強い馬がいても一強ムードには一度もならなかったのだから。今年にもう一回4歳で日本ダービーをやってもドゥラメンテにオッズが偏ることは想像しづらい。

だが近年の春天は日本競馬的に高度な戦いになっているからな。強い中長距離馬が老いと若さの絶妙な狭間で揺れ動いた時期に勝つレースだ。フェノーメノなんかは3歳時に秋天で2着しているわけで、それがちょっとズブくなったら春天にピタリとはまった。不死鳥のごとく春天だけを勝ちきる馬になっちゃった。

でもフェノーメノはかなり早熟な馬だったよな。4歳時の春に一気にズブくなって宝塚記念じゃビュンッと走る気概を完璧に失っていた。エイシンフラッシュのドスロー秋天をビュンビュンしていたのが半年前とは思えないくらいだった。

その観点からはアドマイヤデウスがピタリとハマるかもしれない。4歳春の日経賞ではウインバリアシオンに引導を渡す華麗なるまくりを決めたが本番では案外だった。あの日経賞は俺の中では伝説になっていてね。ウイバリをあんな風に負かすのはオルフェだけだと思っていたから、世代交代をまざまざと見せつけられた内容だったわ。

ステイゴールドのシルバーコレクトと違ってオルフェーヴルという圧倒的上位がいたことを原因とするシルバーコレクトだものな。これだけ強い馬が青葉賞日経賞を含む4勝とは悲しいことだが、オルフェーヴルに全てが劣っていたことは事実なのである。一人の競馬ファンとして「強い馬が強い内容で勝ち続けた」ことは嬉しく思う。

だが春天適性においては違う。こればかりはウイバリが上手だったのだ。だからどうしてもここは戴冠して欲しかったのだが・・・春天フェノーメノ屈腱炎が立ちふさがった。因果としか言い様がない。屈腱炎サラブレッドの運命と言えようが、立ちまわった同格の春天適性馬に敗れるというのは悔しすぎる。これは競争能力ではなく不器用ゆえの敗北なのだ・・・。

デウスもまた不器用な馬だ。だが日経新春杯では岩田のイン突きで立ちまわった実績があり、人気のない今ならば可能性はある。内枠にはいれー。内枠にはいれー。

また抵抗の大きい芝でどういったペースが刻まれるかも未知数。ハナはキタサンブラックカレンミロティックあたりとなるだろうが、どっちが逃げてもマイペースだ。秋山も武豊も抑えるでも急かすでもなく馬なりでペースの基準を作るタイプだから芝抵抗がペースの鍵となる。

キタサンブラックは走りが綺麗でパワーはさほどないタイプだから(というか最近の菊花賞馬はパワーが希薄)ちょっとペースは落ちるかもしれない。それならカレンミロティックのペースであって欲しいがこれもまた微妙。単純に能力が落ちすぎているのである。

だれかかしらに行って欲しいのだが春天でハナを切るほどの実力者は不在である。ヒシミラクル菊花賞は落馬した武豊をみんなが探していたから乱ペースとなった、なんて笑い話があるくらい。逃げて好結果をもたらしたジョッキーは以下のとおり

ビートブラック 14番人気1着 石橋脩

ホクトスルタン 6番人気4着 横山典弘

イングランディーレ 10番人気1着 横山典弘

セイウンスカイ 2番人気3着 横山典弘

メジロパーマー 4番人気3着 山田康誠

ミスターシクレノン 5番人気5着 松永幹夫

分かりやすい横ノリ無双だ。

道中で前へ取り付く競馬もペース配分が重要となるが、これは決め打ちと判断がしづらいので列挙しない。蛯名や武兄弟はその道ではやはり上手く、決め打ちタイプでは和田竜があるだろう。

武幸四郎はやはり京都が達者で、盾男の兄貴と同格だと思う。この十年で0-1-1-2。メイショウドンタクの13番人気3着やファストタテヤマの13番人気6着は素晴らしいし、人気の乗り替わりできっちり結果を出したところも偉い。秋華賞春天なら幸四郎は買いだ。

問題は誰も幸四郎に騎乗依頼を出さないことだ。コジフト調教師みたいにわざわざ関東へ呼ぶ人もいる一方、重賞で幸四郎を見ることは非常に少ない。人気に乗ることなど1年間で・・・一度見るか見ないか。

藤岡兄貴もそうだけど乗れる騎手がいるのに酒井学みたいな産廃がチャンスを得るのは不思議なものだ。なんで酒井学って乗り替わりが極端に少ないんだろうな。ハクサンムーンみたいに連続で振るわない限りは続行だもん。うーん、主戦を務める馬を大事にしているからこそ乗り替わりがないのかもしれないし、あまりこの辺りは触れない話題かな。

でも騎乗はクソだよ。間違いない。藤岡兄貴や幸四郎の方がまだいい騎乗する。

あれ、よく見たらノリがいないぞ。ペース判断が出来る騎手が少なすぎるんじゃないかなぁ。人気が先行~好位に固まるから・・・差しが決まると見たいが動ける馬が少なすぎる。サウンズ藤岡祐介が間違わずに動けるならいいとこまで行くかも。

アルバートルメールがどこに収まるかが分からんね。一番スタミナがあるのはこいつだから面白いとは思う。中山では少し動きづらいところはあるけれど京都の長丁場ならダラダラと脚は伸びそうだ。ちゃんと東京を33秒4で弾ける脚もあったわけだし、今ならいい具合に仕上がってるのではないかと思う。だが長丁場のルメールというのは謎だ。

シュヴァルグラン福永というのはアンマッチだが今ならそこそこかね。復帰してからの福永は懐が狭くなった。だからナスペリオン的に靭やかな馬を動かせるようになったし、今ならハーツクライ産駒を任せるのもやぶさかではない。今までは牝馬とかピッチ馬しか信頼出来なかったからな。

しかし渋い男馬を動かすことが出来た反面で、切れ馬を扱うことが下手になってきた。それはドゥラメンテリアルスティールで追いかけ続けたこともあるのだろうが、好位でジッと構えてから動かす騎乗が出来なくなっている様子がある。全てが噛み合った敢然たるあの皐月賞の競馬がねじ伏せられたのは福永のキャリアに深い傷を残すかもしれない。

だからこそハーツクライの男馬でもありなんだが。なんかウチパクさんルートをたどっているんだよねぇ。ビッグアーサーで勝ち切ったことを成長と見るか劣化と見るかが難しいんだ。

ん?それを言ったらヴィルシーナの4分の3弟は絶好か。図太く動き、荒い騎乗も何のその。絶好じゃん。

ただウチパクさんほどの戦術論を福永は持たないだろう。東京マイルにおけるウチパク騎乗は一つの芸術だからね。マイルであんな逃げ方して残せるのはウチパクさんくらいなもんだよ。

福永のG1における弱さはドンピシャがないからだ。どこでも流れに沿って差し込めるけれどあくまでも他人の流れの中での話よ。男馬をガッチリ動かすなら周りを動かしにいかなきゃ大舞台で勝負することは難しい。究極の例はゴールドシップだな。

それが出来ないなら池添みたいに機を見るに敏な差し込むスタイルで行くしかない。これでオルフェーヴルを三冠に導いたのだからやはり名手である。あのゴリゴリの男馬をビュッと動かしてまくるのは想像よりずっとすごいことだと思う。振り落とされたり逸走したりの話題が先行するが勝負どころに向けて馬の集中力を高めていく騎乗は日本人じゃピカ一だ。だからスイープトウショウも勝たせられた。

この狭間で揺れ動く福永祐一名騎手候補。ウチパクルートを行くなら名馬との出会いが必須だが・・・。

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