砂時計のくびれた場所

競馬の血統について語るブログ

父の成し得なかった栄光を三度 安田記念回顧

「偽ベリーの騎乗をチェックしなきゃな」

なんてこといいながらすっかり忘れていて、気がつけば鳴尾記念安田記念とレースが終わってしまった。結末はサトノノブレスロゴタイプという予想外れのジャイアンツキリングであるからホントに衝撃的。

しかし今回のペースならステファノス安田記念を走ったほうが良かったかもしれない。Lady Rebecca✕Chris Evertがいたずらをして中長距離化しているなら凡走していただろうし、DanzigLyphardの回転力が増しているならば好走しただろう。Alzao≒Chief's Crownの共通点って「スピード✕スタミナ」の配合形であることだ。どっちが表現されるかなんて分からない。

でも鳴尾記念を突き抜けていればもっと面白いことになっていたからな。しょうもない話。

して、安田記念

偽ベリーは下手糞だね。川田だったら4角で先頭になっていたし、3角でもう仕掛けに行ってるよ。1番人気がレースを動かして高レベルな争いへ持ち込まなければならないし、また東京マイルはそういった争いに持ち込みやすいレースなのだ。だからペースが淀まない。

それを抑えて抑えて前にくっついて行くんじゃ話にならない。オーストラリアや香港には逃げの文化がないのかと思わんばかりに従属的な騎乗だった。逃げるな、のオーダーが出た新人ジョッキーなみの抑えっぷりだったね。

こんな騎乗しか出来ない奴を1.7倍に乗せるのでは話にならないわ。横ノリや隼人、ユキト、吉田豊などの関東騎手が乗れない東京G1ってなんなんだ。3人しかいない関東騎手は3人とも掲示板入りしてんだぞ。

冗談抜きで堀さんはベリー違いをしていたとしか思えない。「過去にほら、若潮賞で乗ってるからベリーにお願いしよう」と。それじゃなきゃこの騎乗は納得出来ないぞ。

そりゃ確かにね。91年の早生まれだから俺と同世代よ。今年で26だろ?ジョッキーとしてはめちゃくちゃ若い。それで日本へ来るだけの実績があるんだから育てたくなるよ。囲い込んでJRA所属にしよう・・・とか思わんでもないだろう。

しかしそれにしたって今回の状況判断はまずいだろう。加藤調教師があんな騎乗されてG1を取り逃がされたら烈火のごとく怒り狂ってその騎手を干すレベル。社台の外国人優遇だって実力ありきなわけで、その社台が任せる騎手なのだから・・・と安心していた競馬ファンは多いはずだよ。

スローの逃げに対して1馬身空けて走るなんて真似は・・・まずないね。日本の抱く「外人ジョッキー」像においては、クソみたいに上手い折り合い技術で逃げ馬に併せながら2番手を追走しているはず。

それに対して田辺の上手さよな。「内から乾く馬場」を察し、ラチ沿いをズーッと走り続ける騎乗は素晴らしい。

なにより馬なりでスーッとディサイファを制したあの逃げ具合。メイショウナルトを御して逃げ戦術に目覚めさせた手腕は本物だ。あれが出来るから武豊の絶妙の逃げを制する事ができる。エイシンヒカリを制してクラレントで逃げた秋天を思い出させる。

しかしロゴタイプの押し切りとは・・・。2年連続のダービー卿CTから勝ち馬を輩出したってのは面白い話。

そしてVMストレイトガール)→オークスシンハライト)→日本ダービーマカヒキ)→安田記念ロゴタイプ)と東京G1はHaloクロスで天下取り放題な状態。

またこの中でHerbagerクロスを持つのは、シングスピール持ちのロゴタイプシンハライト、Devil's Bag✕モーニングフローリックストレイトガール、一本しか持たないのは母母父Rainbow Cornerのマカヒキ。HaloクロスにはHerbagerが欠かせない説が浮上。

マカヒキにしてもロゴタイプにしてもフランスっぽい切れを補完しているところがあり、そこら辺の比較をしてみるとちょっとだけ面白いかも。

しかしロゴタイプね・・・Secretariatの直系馬とかPrincequillo系でもHill Princeの枝葉とか持ってて、パッと見た感じだと代替血統まみれなんだわな。しかしそのスターバレリーナが走ったのだから面白い。4代母の配合なんかはいかにもWar Relic的で、きょうだいかと疑ったよな。

それでもやはり濃密なスタミナが伺えないから、3歳春から重賞を一つも勝てない惨状も納得。今年もまだ現役を続けるのか・・・と思っていればこの大躍進よな。実力での勝利ではないにしてもアドマイヤコジーンと似たようなことをする馬がまた出てくるとは。

アドコジは「ノーザンテーストの産駒は3度変わる」の評価通りの本格化によるところが多いが、ロゴタイプは展開に恵まれた勝利だろう。底の浅い軽快なスピードを感じさせる血統で、歳を重ねて味がある配合には見えない。

だがMill Reef✕Specialのナスペリオンを揃えた配合とHerbagerの「在り方」・・・これは非常に綺麗なものだと思う。これを言うとローエングリン、ひいてはシングスピールを褒めるべきなのだろうが。

HerbagerってSon-in-lowの父系で、4代父BosworthはHyperionの牝系なのだわ。擬似的ハイインローと言える。それとPharosの血も持つので、総じて英愛との配合も良い。

加えてTeddyも持つからBull Dog=Sir Gallahad、La Troienneなどとも相性もよい。これらは米血統に良く見られるフランス血統だ。

フランスとアメリカで種牡馬生活を送っているので、Herbagerのクロスが入る場合は「Herbager+英愛仏」か「Herbager+英愛米」の配合となりやすい。これがまた妙味ありで、しかもシーホークやGrey Dawn、Ballade、Rainbow Questなどの血は非常に大きな勢力を持っているのだから素晴らしい。

こういったアウトブリーダーは血統の「ダシ」になりやすい。使い勝手がよく、競争能力を大きく阻害したりせず、この血が入るだけで配合が決まる。その上で次に何を弄るべきかも分かりやすい。

けれどスタート地点はHerbagerなわけだ。姿形は多少変わってもHerbagerを使った配合であることに変わりはない。だからこの血をクロスするということは「同じ系列のラーメン店のスープをミックスする」ということと似ている。そこまで不味くならない。やったことないけど。

けれど・・・ほら、Danzigだと結構違ってくると思うのよ。自己主張が強いし脈絡する血統も多い。しかもたまにChief's Crownみたいな変わり種もあるわけで、濃厚とんこつ味噌とあっさり塩をミックスする惨事も起こりえる。

そもそもDanzigは勢力を大いに拡大したNorthern Dancer系だから分店も多い。独立していった奴らの顔ぶれを思い出して欲しい。みんな個性的でさ、「俺はオヤジとは違うんだ!」と喧嘩別れしていった様な奴らばかりでしょ。特にDanzigなんてひどいもんだったでしょ。

けれどDanzigの弟子たちはみんなNDオヤジのことが大好きだったよな。だからNDクロス全盛の今に、Danzigが輝くのも仕方がないんだよ。Danzig本人はともかくDanzigの弟子たちはNDオヤジをこよなく愛していたのだから。

でもいつかはDanzigオヤジを愛してくれる人も出てくる。釧路にも濃厚系の波が押し寄せてきているけれど、もう一度細麺ちぢれ麺の流行がまたやってくると信じている。太くて濃い味のラーメンなんて認めない。ラーメン食べたくなってきた。

この時に最も大事なことは・・・Danzigくらいの大きな店ならいつか絶対に原点回帰(インブリード)するときがくるってことさ。それが何代後かは分からないにしても、血統によっては3代4代で成功することもあるだろう。

オルフェーヴルみたいにメジロマックイーンというアホな血統で制圧してしまえば話は早そうだがね。

あー、Herbagerってのはメジマックみたいなもんかもしれないな。ただメジロマックイーンステイゴールド相手にしか活躍馬は出せなかった。その代わり一発は大きかったがね。将来的にはニアリークロスの重要点となるだろう。オルフェ≒ゴルシニアリークロスの。

そうだね。Herbagerのクロスはニックスの根拠とはなるだろうが、なくちゃならないというわけでもないだろう。あったほうがいいけれど、マカヒキの様にHerbagerを共通とせずとも良い配合は成り立つ。

Herbagerに何代も後の世代に遺伝させる何かがあるとは思えない。

あと、データ面での回顧をすると・・・

ロゴタイプの上がりが33.9秒でモーリスの上がりが34.0秒。4角であった1馬身が縮まるどころか広がった1と4分の1差での快勝。騎乗ミスと言わざるをえないな。これからロゴタイプが大躍進を遂げるのであれば話は違ってくるが、そりゃ当然ありえない。

どこかでコンマ5秒だけ負荷をかけてやれば突き抜けたはずだな。1分32秒の争いにまで持ち込めば接戦にはなっただろう。

メンツを見るほどに限りなく少ない可能性だったよなぁ。モーリス殺しってのは。ディサイファが逃げてもクラレントが逃げても押し切るところまではいかなかった。フィエロが逃げていたら違ったかもしれないが、この馬は不器用だからラップの足し算引き算は難しいだろうな。

ロゴタイプはスローから弾ける瞬発力があったし、なにより試行錯誤されてきた中で気性が和らいだ。その分だけ中山4角のビュッと動く感じがなくなったが穏やかに逃げこむことが出来る自在性を得たのだろう。

またロゴタイプってあんなにストライドが伸びたんだな。そりゃルメールあたりが乗れば差しにまわしたくなるわ。しかも限界が低いのだからなおさらだろう。というかそれをやってればどこかしらで重賞を勝つことは出来たと思う。しかし再びG1を勝てはしなかっただろう。

Fair Trial絡みのクロスがあるから再加速は得意で、だから重厚さの育たない3歳春ではねじ伏せることが容易かった。けれどそれの育ちきったラブリーデイヌーヴォレコルトマジックタイムらを相手にすると話は違ったよな。鈍ったところをデンデコデンデコと粘り強く差してきやがる。

再加速は鋭くても限界が低いからな。12.0秒で締めたところを11.7秒で差し込まれれば再加速もあったものじゃない。グラスワンダーは差してきた馬すらヘロヘロになってしまうペースでも押し切りに動けるところよな。

ロゴタイプもマイルばかりではなく有馬記念にも顔を見せて欲しいものだわ。あのねじ伏せる競馬を有馬記念で見られたらどれだけ嬉しいことだろう。安田記念を制した今ならば「あるいは」と思わせられるし、少なくとも見せ場はあると思うんだ。

どうせ復活するなら小倉記念とかで良かったのに。ドリジャニ路線だな。

最後にリアルスティールについて。

まぁ当初から安田記念挑戦についてはつまらない気持ちであったのだが、ここまで大敗されることも望んじゃいないわな。チェッキーノビッシュくらいに「あ、流石人気馬だな」と思わされるものがあると思っていた。

口を割ってアガアガした時点で終わったよな。モーリスもモゴモゴしてたけれどもアレはアレなりにビュッと動かせる範囲で折り合っていた。それを併せながらやってくれればなんにも文句はなかったさ。

リアルスティールはアガアガしてからは綺麗に折り合ってしまったからね。あれは馬の闘争心が完全にオフとなったんだ。あそこからビュッと加速してウンガーと粘り強く走れっていうのは無茶ぶり。馬がもうレースをする精神ではなくなってしまった。

そんなことをマイルでやってしまうってのも問題だが、田辺がそういったペースに落としたこと、偽ベリーがそれを許容したこと、これらも問題だわな。こんなレースが起こりえるのだなぁと。

またリアルスティール自身も昨年の秋からズバッと動くタイプの馬ではなくなっているのだと思う。多分上がりのリミットは34秒台前半まで落ち込んでいるんじゃないかな。場合にもよると思うけれど33秒台で差し込んで味のある馬ではなくなってるはずだわ。

もともとディープ✕嵐猫という配合が差し脚重点の配合というわけでもなく、キズナというのは一つのパターンに過ぎない。逃げのエイシンヒカリ、追い込みのキズナ、好位のリアルスティールってね。そしてまたこの配合は中距離を走ってなんぼだろう。

キズナ春天を走っても微妙だし、リアルスティールがマイルを走っても微妙である。おとなしく2000m前後のレースをビュンビュンしていれば良いのである。

[fin]