サンデーが遠のく分だけ中距離の絶対性は薄れてスプリント適性は上向く。
しかしそれは「サンデーだからこその速さ」も薄れているわけで、「8分の1サンデー」だからスプリンターとして優れているということではない。サンデーを糧とした良質な速さをオンにしていないと質が落ちてしまう。
アドマイヤムーン産駒のハクサンムーンやセイウンコウセイはMr. Prospectorの速さで走る。しかもHalo的な軽さもオンになっていて、現在のマイルレコードホルダーもアドマイヤムーン産駒のレオアクティブだ。
アドマイヤムーンはHaloとMr. ProspectorからしかBlue Larkspurを引かず、そんでもって「Nearctic×Native Dancer+北米血統」によってBlue Larkspurアウトが行われているのがミソ。
アドマイヤムーン産駒の多くはNijinskyによるNorthern Dancerクロスで成功しているが、こういった棲み分けの明確な配合はツボをまとめて押してしまう様な血統が美味しい。
こうした母父サンデー種牡馬はBlue Larkspurの観点で棲み分けに秀でたものが多い。スクリーンヒーローもそうである。そしてそれは父父サンデーの種牡馬も同様・・・ではない。
何故か?ディープインパクトという化物がいるからだ。
ディープインパクトはウインドインハーヘアによる「2分の1Blue Larkspurアウト」を誇るリーディングサイアー。
しかし産駒へ「4分の1アウト」を供給する種牡馬は決して少なくないし、ステイゴールドやダイワメジャーといったノーザンテースト組によく見られる傾向である。ルーラーシップもその類。
よって「ノーザンテーストを使わずに4分の1アウトを供給するからディープインパクトは素晴らしい」という理屈である。
バブルガムフェローも非ノーザンテーストでバブルカンパニーによる「4分の1アウト」を供給するが、これはProminerがHyperion3×3であるから「サンデーサイレンス×ノーザンテースト」と同じ弱点を抱えている。(Mountain FlowerへのHyperion供給過多)
なのでより正確に書くと「ノーザンテーストを使わずにBlue Larkspur4分の1アウトを供給し、独自の影響力を伝えるものをHaloによる『8分の1Blue Larkspur4×4』に厳選している。よってディープインパクトは素晴らしい。」ということとなる。
ところが、その独自性を完璧過ぎるほどに成立させたのが全兄ブラックタイドの産駒キタサンブラックであった。なのでよりより正確に書くと「ノーザンテーストを使わずにBlue Larkspur4分の1アウトを供給し、『8分の1Blue Larkspur』を担うHaloの影響力を弱めた。夜にはびこるBlue Larkspurを吸収する仕組みとしてウインドインハーヘアを伝えたためにディープインパクトは素晴らしい。」である。
そのためディープインパクト産駒というのは短距離戦線でもかなり異質な存在だ。ミッキーアイルとかいうおかしな配合馬がG1を二つ勝ってしまうあたりにもおかしさが見える。
ただミッキーアイルというかスターアイルってのも見どころのある配合で、Northern Dancerの状態がまるで気に入らないけれども、Busandaを表現させる条件が揃っている配合ではある。(スターアイルはBusanda6×6)
6×6を表現の舞台へ上げるには多くの積み込みを行わければならなくて、スターアイルは数少ない好例というべき繁殖牝馬だ。血統の常識に逆らう競争馬は、いつだって遠いクロスを表現してくる。
高松宮記念の出走馬はみんな魔法で走っている馬ばかりで、一代限りで一頭限り、神の表現が競争能力の担保だ。けれど高松宮記念を駆け抜けた馬はみんな魔法には頼っていない。
むしろ8分の1サンデーのくせに魔法の表現で走ったハクサンムーンなんかは負けているくらいだわ。普通の配合で良い。黄金配合で良い。8分の1サンデーはそれで良い。
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